今日はサクラと二人で出かける予定だ。楽しみすぎて待ち合わせの時間より三十分も早く着いてしまった。とりあえず近くにあったベンチに腰掛け、雲一つない空を見上げながらどこへ行こうかと考える。春服も見たいし、新しくできたアクセサリーショップも覗きたい。そういえば紅先生がツツジが綺麗に咲いてる場所があるって言ってたような……あれは里のどのあたりだったっけ。そうしてああだこうだと考えているうちにサクラがやって来るのが見えた。
「名前、ちょっと待って」
「どうしたの?」
合流して移動を始めた頃、唐突に腕を掴まれて立ち止まった。不思議に思っていると彼女はずいっと身を乗り出して私の顔を見つめてくる。どきどきどき。鼓動の音が聞こえるんじゃないかと思うほどの距離。顔に何かついているのかと尋ねようとしたところで「やっぱり」と呆れたような声がした。
「何かついてた?」
「違うわよ。アンタ、ちゃんと休んでる?」
「え?」
「いいから答えて。最後に休みをとったのはいつ? 最近どれくらい任務に入ってた?」
まるでお医者さんの問診のような質問が続く。訳が分からないまま素直に答えているとサクラの眉間に皺が寄っていく。え、何、こわい。
「予定変更。今日は私の家でのんびりしましょ」
「えー!?」
「買い物はまた今度ね。今の名前に遠出なんてさせられないわ」
「そ、そんなぁ……」
「まったく、自覚がないのが恐ろしいところね。チャクラの流れも悪いし、顔色も良くないわよ」
「言われてみれば……何か身体が怠い気がしてきた」
「昔からそうだったものね。覚えてる? 第七班で行動してた頃、自分の限界に気がつかないでナルトと一緒に倒れたこと」
そういえばそんなこともあったなと思い出す。ナルトは体力切れ、私はチャクラをほぼ使い切って意識を失った。困ったことに私は限界になるまで疲労をほとんど自覚できない体質だ。倒れたり寝込んだりして、やっと自分の不調を自覚することができる。第七班にいたときはサクラやカカシ先生がそれとなく声をかけてくれていたけど、サスケくんが里を抜けてからはみんなそれぞれの師と共に修行をしていたので、そういうこともなくなっていた。
「ごめんね、買い物楽しみにしてたのに……」
「何言ってるのよ。むしろ倒れる前に気がついてよかったわ。名前は目を離すとすぐ無理しちゃうから」
腕を掴んでいたサクラの手は、今は私の手を握ってくれている。昔と変わらない、あたたかくて優しい手。私をどん底から掬いあげてくれる大好きな手だ。
「そうだ、家についたら疲労に効くハーブティー淹れてあげる。味も良いしよく効くわよ」
「やったー! 楽しみ!」
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