「宮地って私のこと好きなの?」
そんな言葉を言うつもりはなかった。
私は宮地のことが好き、と言いたかったはずなのに咄嗟に出てきたあの言葉。ありえない。
とにかく恥ずかしさとやってしまったという焦りで逃げた。全力で。
「何をしたかったんだ私は‥」
思わず独り言を発してしまっていた。
あーだとか、うーだとか、唸っていると。
背後に人の気配と私が大好きな声が同時にやってきた。
「なに独り言言ってんだよ、轢く‥あっ!」
話してる途中ごめんね、私逃げないと。
しかし、それは叶わなかった。さすがバスケ部。反射神経グッジョブ。
‥て感心してる場合じゃなかった。
「逃げさせてくださいお願いします」
「逃がすと思うか」
「‥優しい優しい宮地くんなら」
「轢くぞ」
どうしてこういう状況になったのかな‥ああ、自分のせいか。
ああ、本当についさっきの自分に阿呆って言いたい。
「さっきのはわ、忘れていいから‥」
言葉の最後はほとんど聞こえないくらい小さな声になっていく。
ふと宮地の様子を伺うと、機嫌悪そうな顔してた。
「お前なあ‥」
ガシっと思いっきり頭を鷲掴みされ、ぐいっと頭を下げられた。
「好きな女にそういうこと言われたら焦るだろ、それから忘れろなんていうまでもなくなよ‥」
「はい?」
「俺も好きだよ」
その言葉を聞いた瞬間、目から涙が溢れ出した。
みやじーと言いながら両手を伸ばし、勢いで抱きついてしまった。
けれど宮地は躊躇いなく受け止めてくれた。
「泣きすぎ」
「ごめん」
抱きしめられて、頭をポンポンと撫でられて‥どこのリア充だか。
▲▽▲▽▲▽
「あの頃は悲惨だったな」
「うああ!思い出したくない!言うな!」
「まあ、あんなこと言われなくても俺はお前に告白してたけどな」
「‥そうなんだ」
「何照れてんだよ」
今では良い思い出に変わったけれど、あのことが無ければ私たちずっと一緒にいなかったんだな。
宮地は私に告白するつもりだったらしいけど。
ああ、本当にあの頃の私に感謝。
20130524
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