私はモデルとして活動している。もちろん学校とみんなには知られていない。
モデルとして活動しているのは芸名だし。
それに、学校での私とモデルでの私とでは全くキャラや容姿が違う。
学校での私は規則通りのスカート丈に眼鏡といった地味な女‥けれど少しモデルとしてのプライドがと思う私はそこまで地味を演じていない。容姿は。
しかし中身は別。友達とはよく喋るが男子とは喋ることがない。
特に男子の中でも同じクラスメートのあいつと喋ると厄介になりそうだ。
「(き、黄瀬‥)」
実は同じ職場で働いている黄瀬涼太とは同じクラス。しかし本人は私が私だということに気がついていない。
気づかれても困るのだけど。
「今日の日直はみょうじと黄瀬なー」
そんな黄瀬とは席が隣。
バレるといけないからあまり喋りたくない。
だから、今日部活とかあるでしょ、私一人でやるよ、と言えば、遠慮するっス、とモデルスマイルで断られた。
くそ、イケメンが。
「みょうじさんってなんか前から会ったことあるような感じがするんスよね」
「そうかな?(こいつエスパーか何かか!?)」
こいついつか気づくな、とか思っていると黄瀬の携帯がなった。
メールらしい。
「‥明日か」
「明日?」
「仕事っス」
「そうなん‥」
私の携帯もなり出した。
まさか‥
「(仕事!?しかも電話!?)」
「出なくていいんスか?」
「あ、出てくる!」
急いで教室を飛び出し電話に出る。
「もー!斎藤さん!この時間は仕事用にお願いしますって!」
「あーごめんねー」
「もう‥」
「明日ね、仕事入ったわよ〜しかも黄瀬くんと」
「わかりました‥」
斎藤さんは私のマネージャーで私の事情を知っている人。
「ごめんね‥抜けて」
「良いっスよ」
日直の仕事をしながら喋る黄瀬はすごく楽しそうだった。
「明日仕事あるんスけどすげぇ楽しみなんスよね!」
「どうして?」
「明日、一緒にモデル撮影する子いるんスけど、すげぇかわいいんスよ!!」
思わずむせそうになった。
落ち着け自分。こいつの言うモデルは私のことではない。自惚れるな、自分。
そう落ち着かせようとする私の努力はすぐさまに打ち砕かれる。
「まみって子なんすけど!」
「あ、あの‥まみ」
「そう!仕事にすごい一生懸命でその姿もかわいいんスけど、喋ってるときに見せる笑顔もちょーかわいいんスわ!」
「そ、そうなんだ‥」
私のモデル名はまみ。つまり、その“まみ”はこの“まみ”だ。
動揺しすぎて立ち上がろうとしてフラッとよろけてしまう。
「だ、大丈夫っスか!?」
そのままこけてしまった私のそばにかえわけよる黄瀬。
「あはは、大丈夫だよ‥‥‥?」
笑ってみせるが黄瀬はすごく驚いた表情をしている。
え、どうしたの。
「ま、まみ?」
「‥‥‥え?」
「えってこっちのセリフっス!」
「や、まみじゃないです私、はい、違います」
「いや、絶対まみだ‥眼鏡かけてるとこんなに分からないもんスか‥?」
「いや、だから!」
「髪もおさげにしてるから?」
「だから、私まみじゃないって!しつこいよ、涼太く‥」
「涼太くん?」
「(しまった‥)」
それでも違うと言い張る私を見て何故かさっきまで慌てていたのに、にやりと笑う黄瀬。
「俺、まみのこと好きなんスよ」
「そう‥」
自分に平然を装わせようとするが無駄だった。
「どうしてそんなに顔赤いんスか?」
くつくつ笑う黄瀬。
やっぱりまみだ、なんていうから、どこ見てそんなのわかるの!?と聞けば、
「慌てると耳を赤くするとこ?」
ああ、イケメンがそんな言いかたすると更にイケメンになるよ。
「俺、まみ‥じゃなくてみょうじさんが好き」
「‥さっきまでの聞いてると、まみのことをかわいいって言ってたでしょ?」
「そうっスねー、でもまみのことかわいいって言ってたときにすごい照れてたみょうじさん、すごいかわいかったっス」
「‥」
「欲しい」
「は?」
「みょうじさんが欲しいっス」
首を傾げて伏せていた私の顔を覗きこむこいつはすごくあざとかった。それからかっかよかった。
本当、イケメンきらい‥。
「無言は肯定ということっスか?」
さらに覗きこんできたことに驚いているとあっという間に唇がさらわれた。
結局、きらいとか思いながらもおちてしまうんだな。
そこにいたんだね
201404
back