ポッキーの日 | ナノ


ポッキーの日





11月11日。ポッキー&プリッツの日だなんだのと、クラスの女子がポッキーを交換し合って楽しそうにしていたけど、正直どうでもいい。つい二週間前はハロウィンだのとはしゃいでいたのに次はポッキー。お前らただお菓子食べたいだけじゃねえのか。こんな浮ついたイベントは女子のやるものであって俺達男子には関係ない。……ただ一人を除いて。

「ひーじかーたくーん!今日は何の日ポッキーの日ー!!」

そうだ。糖分フェチなこの男は昨日コンビニに寄ってポッキーを買い漁っていた。そして今日、女子のポッキー会とやらに当たり前のように参加し、嬉しそうにむしゃむしゃと頬張るだらしない姿を嫌というほど見せられたのだ。

「…随分と楽しそうじゃねぇか」
「土方はつまんなそうだね?そんなあなたにはい、ポッキー!」
「…」

ぶす。
いつにないテンションの高さに嫌になり適当に流そうかと思ったその瞬間、鼻に激痛。

「っ…!ってぇな何すんだテメッ…」

殴りかかろうとした時には既に坂田の口の中でその証拠は粉々にされていた。…っておい、今のそれ。確かに俺の鼻の穴に突っ込まれたはずだと、目の前の男の所業に目を疑う。

「…はっ!?お前、それ…!」
「うん!やっぱポッキーは美味い!」
「あんな汚ねぇもん食べ物じゃねぇだろ…」
「大丈夫!俺は土方のものだったら鼻毛でも鼻くそでも食べれるから!!むしろ我々の業界ではご褒美です!」
「気色悪いこと言ってんじゃねえええぇえ!!!!」

瞬間、顔にふわりと柔らかい感触。
(近い、)
そう思ったときには既に遅く。

「っひ…!」

未だ痛む鼻をぺろりと舐められ、舌のなまぬるさに鳥肌がたった。

「…あは、チョコついてたから。…って、土方?」

情けないことに、完全に腰が抜けた俺は床にへなへなと座り込んでしまい、立ち上がることができなかった。

「…っくそ、」
「あれ、もしかして、腰砕けになっちゃった?」

ポキッていっちゃった?ポッキーの日だけに?なんて、にやにやする坂田。何だこいつ。むかつく。

「くだらねぇこと言ってんじゃねえ、びっくりしただけだ…」

見下されてるのが気に食わず、壁を支えに立ち上がろうとしたら、急に真面目な顔になった坂田に圧し掛かられ無駄に終わる。

「…っおい、さっきから何がしてえんだテメェは」
「…な、さっきのお前の声、めちゃくちゃエロくてさ」

おっきしちゃった。いやあれだよ、これは、ポッキーの日だけに?ポッキーボッキー俺ギントキーみたいな?

「……」

ほんとに、自分でも何でこんな奴がいいのかわからない。
アホでバカで変態で節操なしで、どうしようもないお調子者で、ただそれだけなのに。

「…ね、していい?」

この声に俺は心底弱いらしい。
ぐい、と主張するそれを制服越しに擦り付けられ、ぞくりと肌が粟立つ。
「…俺のポッキーで気持ち良くしてやるからさ」
「…はっ、せいぜい折れねぇように頑張るこったな」
「うわー、そんな台詞どこで覚えてきたの。お前がそんなこと言うから、俺のポッキーかつてない堅さよ?」

いつまでも変態親父のような戯言を吐くその口を塞いでやると、その瞳は情欲を孕んだ鋭いそれに変わる。余裕なんてないくせに、やけに慈しむような甘ったるいチョコ味の口づけに、俺はあっさりと折れてしまったのだった。




惚れた折れた
あなたもわたしも××××!
 




***

ポッキーの日についったであげたもの。 言葉遊びが好きです





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