ふたつの壁。




栄口くん、大丈夫?




教室戻れる?




ちょっと失礼




まだ熱いね




もうちょっと休んでよっか




体温計持ってくるよ










その大きな手を額に宛てて熱を確かめられただけで

優しく笑いかけられただけで







俺の熱は下がることなく上がってしまった










ーーーーー・・・








あれから何日たっただろうか


風邪は完璧に治ったのにまだ忘れられない感覚







“大丈夫?”







耳に残る声





−・・・。




「わっ!」


いきなり耳元で大声

それと同時に背中を押す手


気を抜いていたため押された反動で転んでしまった


「いったぁ・・・もう、びっくりしたじゃん田島」

「ぼやぼやしてっとモモカンに怒られっぞ」


にしし と笑って立ち去った田島


俺もそろそろ立ち上がろうと思って立とうとする


「痛っ・・?」


俺の異変に気が付いたのか田島が戻ってくる


「どしたー?」

「足捻ったっぽい」

「え!?まじ?ごめん!」


必死で謝る田島に大丈夫だよ、という


「保健室いくか?」



ーードキッ



「いい」

「へ?」


はっとした時には田島は不思議そうな顔をしていた


今のはどう聞いても暗い声だった


「あ・・いや、これくらい平気だよ」


次はにっこりと笑顔を造って言った


だが田島は察しがいいから誤魔化せなかった


「何?」

「な、にが」


じーっと見つめてくるその瞳に逃げたい気持ちで一杯だった


「保健室で何かあった?」


「・・別に」

「じゃあ行こーぜ」


ぐいっと腕を引っ張り立たされる


俺は深く問いただされなかったことに安心していた





「失礼しまーす」


中に入ると先生はそこに居た


島崎先生・・・



「栄口が足捻っちゃって、ちょっと見てください」


「あらら・・靴脱いでもらっていい?」

「はい」

「ここら辺痛い?」

「少しだけ」


足首を触って確認される


それだけで緊張してしまう


自分の顔が赤くなってないか不安で気付けば俯いていた「じゃあ湿布貼っとくから」

ぱっと顔を上げた島崎先生





近・・・





「後は様子みて、治らないようなら病院行って・・・」


説明が頭に入らない


その声にクラクラする


テーピングしてくれるその手にドキドキする


心臓の音がうるさい・・・



「どうかした?」


「え?あ、いえ・・・」

「栄口おかしいですよね?今日ずっとこんな調子なんですよ」

「最近疲れた顔してるし・・何か悩み事?」


言えるわけない


俺には今ふたつの壁がある


それを乗り越えられるのか




ひとつ目は恋してる人物が男だということ



ふたつ目は先生だと言うこと




俺にはこのふたつの壁がある



乗り越える自信も勇気もない



壁がひとつでも多分自分には無理だろう





「栄口くん?」





だからこの気持ちを押さえ付けて







「大丈夫ですよ」



笑顔を造る








「あまり無理しないでね」








頭を撫でてくれる手に“これは先生だから”と言い聞かせる







今日も俺と島崎先生は生徒と教師で在り続ける。




これからも、ずっと先も・・・



*end*


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あとがき

生徒と保険の先生パロ

長いうえ駄文

もっと短く簡単に表す方法があるのですがもうたくさん書いていたしめんどくさかっt((

いちおメモ文=今度長編に。

その時はもっと上手く書けますように

終わり



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