いつか思い出すその日まで




「勇人が事故にあったの」




突然電話で言われたことに事態を読み込めなかった


電話をくれたのは勇人のお姉さんで今勇人の携帯の電話長に入っている人に電話をかけてそのことを伝えているらしい



「え・・・事故って、今大丈夫なんですか?」


「特に大きな怪我は無いんだけど・・・ただ」


一度そこで言葉が止まった

嫌な予感がして息を飲む


「記憶を一部失ってるの」


ーードクン


心臓が何かに握られたようだった


手から携帯が落ちた


カシャンと音をたてて床に停止する



失ってるって?

記憶が無いってこと?



そこで一部という言葉を思い出した


携帯を拾い上げる


「すみません・・・えっと、一部って?」


携帯を落としたことを謝りそう尋ねた


「家族のことは分かったんだけど知人の人を覚えてなくて・・・」


時が停止したような感覚になった

覚えてないということは



俺も忘れられているのだろうか


言葉がでなかった


「でも全員を忘れた訳じゃないから・・・明日来てみてくれるかな?」
「・・・はい」



大丈夫


きっと大丈夫



そう思ってるのに心臓の音が鳴りやまない










ーーーーもし忘れられてたら?









「こんにちは」


「勇人この病室の中にいるから話しかけてみて」



心臓の音がうるさかった


震える手で扉に手をかける


中に入り奥に進むとその人物は居た



「勇、人・・・?」



振り返った彼


そして出た言葉




「誰・・・?ですか」








深い闇に落とされた







「誰って・・・覚えてねぇの・・・?」


勇人を見ると不思議そうな顔をしていた


「何で・・だよ・・・何で覚えて無いんだよっ」


込み上げる思いを押さえようとベッドのシーツを握りしめた


涙が限界に迫っていた



足が立つことを止めた


崩れ落ちるようにして床に膝を付いた



涙がポロポロ落ちる
ベッドのシーツを更に強く握り締める


「思い出せよっ・・・勇人っ・・!」



床に向かって吐き捨てる


どんなに言っても無理なのに


頭では分かっているのに



口が分かろうとしない


涙は流れることを止めなかった


すると不意に手を握られた


顔をあげる



「ゆう・・と・・・?」


「ごめんなさい・・・俺、今は思い出せないけど、いつか必ず思い出しますから・・・だからっ」



握ってくれている手を信じてもいいのだろうか



その言葉を信じてもいいのだろうか





全てを信じてもいいのだろうか







いつか思い出すまで










君を信じて待ち続けるよ







*end*

 

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あとがき


一度記憶喪失ネタをやってみたかっただけです


今連載中のものが終わったらこの話を長編にしようか考えてたり


・・・



終わり



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