「よかったー」
「ほんとにごめん」
ふたりして大泣きした次の日
大野はいつも通りに戻り瀬戸と仲直りした
「ほんと、安心した・・・いつも通りに戻って・・・ふたりが別れてなくてほんとによかった」
笑った瀬戸
それにつられて俺たちも笑う
冬の朝の教室は寒い
それでも俺たちは暖かかった
暖かい気持ちでいっぱいだった
「――・・・大野顔なした?」
ホームルームの時間が近付き人が集まり始めた教室
大野と同じ剣道部の竹田がそんなことを聞いた
俺が昨日叩いた頬の腫れは引かなかったようだ
俺が叩いたと言おうか悩んでいると大野が口を開いた
「恋人に叩かれた」
この言葉に誰もが耳を疑った
「え!?大野付き合ってる人いたの!?」
竹田の大声であっという間に教室中に情報が行き渡る
「ずっと前からいるよ」
ざわつく教室
微かに「やだ〜」とか「ショック」とか言う声が聞こえて「大野と付き合っているのは俺なんだ」と思うと少し優越感が沸いた
「え、でも何で叩かれたの?」
「俺が・・悩んでたから・・・説教してくれた」
「叩く必要あったの?」
「それで俺は気付かされたし、救われたから――・・・」
大野がこちらを見る
ドキッと胸が高鳴る
「・・・ね、佐東」
「――そうだね」
顔が熱い
机の下で手が静かに重なる
誰かに見られてないか、ドキドキするけどそれがよかった
今までとは違うドキドキ
幸せだって、心から思う
俺たちはもう大丈夫
周りにバレてしまっても
偏見されてしまったとしても
見方でいてくれる人が居るから
守ってくれる人が居るから
お互いに、強くなれたから――。
44 完
(140601)
戻る