愛。 14



「はぁ・・・何これ・・・」

榎月さんの家にお邪魔して一時間

勉強を進めているうちに無意識にそう呟いた

数学で解らないところがでてきて躓いたのだ

仕方なく他の教科を勉強しようと思ったら榎月さんがこちらに来た


「どこ?」

「・・・え?」

隣に座ってこちらを見る榎月さん

「何ですか?・・・教えてくれるんですか?」

「うん」

「仕事は?」

「さっき片付いたから」


少しの間沈黙が流れる

仕事が終わったのなら、俺も勉強止めてお話をしたい

もっと榎月さんの事を知って近づきたい

けど、榎月さんにそんな気は無いだろう


「・・・じゃあ、ここを」

「ん・・・ここはね・・・」

問題を少し見てすぐに答える榎月さん

その説明が解りやすくて

ふと、榎月さんって何歳だったっけと疑問が出てきた

「・・・頭良いんですね」

「・・・」

「榎月さん位の頭があったら東大にも行けそう」

たった1問教えてもらっただけでも解る

次元が違うくらい頭が良いってこと

「まぁ・・・行けなかったから今こうして働いているんだけどね」

苦笑い、というか・・・苦しそうに笑った榎月さんを見て俺は言ってはいけない事を言ってしまったことに気付いた


いつも苦しそうな榎月さんに俺は何もしてあげられない


だって、榎月さんは俺が何かしてあげることを望んでいないから


きっと誰にも、踏み込んで欲しくない何かを抱えているから。



14 完


(140629)



戻る


 
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -