愛。 13



「榎月さん、今日会えませんか?」

「「無理だよ、仕事片さなきゃいけないから」」


ある日、俺は初めて榎月さんに断られた

それが嬉しいようで少し悔しかった


「邪魔しませんから・・一緒に居たいんです・・・横で静かにしてるんで・・駄目ですか?」

「「・・・わかった、少しでもうるさくしたら帰すから」」


やっぱり、榎月さんはしつこく言われると弱い

そんなところも好きだ――・・・













ーーーーー・・・



「こんばんはー」

21時

うるさくしない、遅くても23時までには帰るということを条件に会ってくれた

ぎゅっと抱き締めたい気持ちを押さえて榎月さんの部屋まで向かう

「・・疲れてます?」

「・・・どうしてそう思う?」

「目の下、隈酷いから」

階段を昇っている途中、そう言うと榎月さんはこちらを振り向き微かに笑った

その表情にドキッとする


またすぐ前に向き直った榎月さんの気持ちは解らなかった



部屋に付くと真っ先に机へ向かい、パソコンを開いた榎月さん

俺はその後ろにあるテーブルの前に座り鞄から教科書を取り出した


「・・・勉強するの?」

「もうすぐテストなので」

「そっか・・・」

目を伏せて反らした榎月さん


今、絶対に柊太のこと考えた

柊太の心配してるんだろうな・・・


「・・・、」

何も言えない

言ったって引かれるだけだもん



だって、榎月さんは俺のこと好きじゃないもん



俺よりも、誰よりも・・・弟が一番大切だから

赤の他人なんかが「俺のことだけを考えて」なんて言えないよ




「・・・柊太に、勉強するよう言っておきますね」


「――・・・ありがとう」



そのありがとうは嬉しくない

貴方の為じゃなく誰かの為にしたことにお礼や笑顔なんて欲しくない


それでも俺は・・・



「どういたしまして」




それでも俺は、そう言うことしかできない。



13 完


(140628)



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