愛。 09



頭がズキズキする

仕事中だけ掛けている眼鏡の度が合わなくなってきたのだろうか


いや、違う

最近交際を始めた相手の所為だろう


自由な時間をほとんどそいつにとられる

名前もしらないそいつと暇があれば会おうと誘われ俺は断れずにほぼ毎日仕事終わりに会っている

断ったら柊太に手を出されそうで怖いから――・・・












「今日は何処へ行きましょう」

「・・・君さ、名前何て言うの?」

何処へ行こうか聞いてくる相手を無視して近くにあったベンチに腰かける

「俺の名前ですか?秘密です、君って呼ばれるの好きなので」

「あそう・・・」

「ただひとつだけ教えるとするならば・・・」


相手は俺の隣に腰かけイタズラっぽく笑い言った






「俺、柊太と同じ学校ですよ」







時間が停まったような感覚


嘘だろ・・・



「柊太今美術部の勧誘うけてるみたいですけどどうするんでしょうね?その前に学校あまり行ってないからどうこうも無いか」


美術部

その言葉に反応する



「・・・ごめん、美術部にだけは誘わないであげてほしい」

「・・・そう言われても俺バドミントン部ですし」

何でよりによって美術部に・・・

2年前の事が走馬灯のように思考を駆け巡る


「――どうしてそんなに柊太を庇うんですか?柊太は貴方の事嫌っているように見えますが」


男と目が合う

黒い笑みを浮かべた彼に背筋がぞっとする


なんなんだ、こいつ・・・


何もかも知っているかのようなその瞳は




「弟の為にそこまでつくしているのに、貴方も可哀想な人間ですね」


こちらに伸びてきた手は俺の頬に触れる

そして口の横辺りを親指の腹で撫で微かに笑った


「――・・・、」



この位置は、柊太の顔にある傷の位置




「柊太の怪我、貴方が負わせたんですよね?榎月さん」



この人はどこまで知っているんだ――・・・?





どうして知っているんだ。



09 完


(140507)



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