このふたりで以後よろしく。 47



3月

とうとう卒業


「他何か持ってくもんあったっけ?」

「無いんじゃない?てかお前ネクタイ忘れてる」

「うそっ」

胸元を見てみるとネクタイが無かった

ネクタイを取ってきてそれを付けると俺たちは家を出た

学校に登校する最後の日

そして田中とこうして肩を並べて歩くのも最後

帰りはそれぞれ別の家に帰るのだから


また肩を並べて歩くことがあるとするならば――・・・











『卒業生退場』


卒業式は無事に進んでいき、早いことにもう卒業生退場の時になっていた

皆が先頭を歩く先生に付いて歩いていく


拍手の音に紛れながら皆の鼻を啜る音が聞こえる


この門を出たらもう全てが最後なのだ


3年間の思い出が走馬灯のように流れていく


学校が嫌いだと思っていた

人間が嫌いだと思っていた


何もかも嫌だと思っていた


けれどもそれは違うみたいだ



嫌いで嫌だったのは自分自身じゃないか

そうやって何もかも投げ捨ててしまう自分じゃないか


だって学校が嫌いだったのなら








こんな風に涙なんか流れないのだから















外で皆がお別れを惜しみ写真を取り合ったり泣いて抱き合っている姿を遠くで眺めていた

すると後ろから誰かに頭を叩かれた



「・・・田中・・・ねぇ、何で叩いたの今」

手で叩いた感覚では無かったためそう聞くと田中は笑いながら手に持っていた物を見せた

それは卒業証書を入れている筒、賞状筒だった

どうりで少し痛いわけだ


「お前泣いてたしょ」

「・・・田中だって」

「まぁ・・・そりゃね」

そりゃそうか

途中から転校してきな田中だって思い出ぐらいあるよね


ふたりの間に沈黙が走る

周りは少しずつ人が居なくなっていった

徐々に人が居なくなるのをどのくらい見ていたのだろう

ほとんどの人が居なくなった時、田中が口を開いた


「俺たちも帰るか」

「・・・そうだね」


これでお別れか・・・


隣にいた田中が少し歩き出したが俺はそれに合わせて歩けなかった

足が動かない


それに気が付いた田中が振り返って少し微笑んだ後、先程俺の頭を叩いた賞状筒を俺の前に突き出した

俺は少し考えた後、田中の賞状筒に自分の賞状筒をクロスさせるように重ねた


ふたつが重なり合うと、コツンと小気味の良い音が鳴った








「「じゃあね」」







重なった声


ふたりして違う方へ足を進めて歩いていく



遠くなっていく足音




不意に涙が流れ出した









また肩を並べて歩くことがあるとするならば


それは俺がまた貴方と一緒に居たいと思った時


貴方がまた俺と一緒に居てくれると言ってくれた時



その時はちゃんと「好き」だと伝えさせて下さい


その時はまた「好き」だと言って下さい







今までありがとう



さようなら



またいつか・・・。



47 完


(140316)



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