弟への罪悪感 | ナノ






弟への罪悪感

「あ、あれ?母さん、親父、帰ってたの?」

土曜日の午後、部活が終わり家に帰宅すると母さんと親父が居た

「おかえり、アスベル」

「それこっちのセリフだから」

久しぶりに会った両親と暫くたわいない話をしているとヒューバートも部活から帰ってきた

ヒューバートも俺と同じ様に驚き母さんに「おかえり」と言われ「こっちのセリフだ」と言っていた

「ふふ、ふたりとも流石は兄弟ね」

「は?」

「同じこと言ってる」

母さんがそう言うとヒューバートは話を反らすようにキッチンへ行き麦茶を飲んだ

「母さんと父さんもいります?」

「貰おうかしら」


あぁ、やっぱり

ヒューバートは俺と兄弟だと言われるのが嫌なんだ



「ヒューバート、高校は楽しいか?」

麦茶を注ぐヒューバートの手が一瞬停まる

そして目を伏せて、冷静な声で

「楽しいですよ」

そう言った


嘘だと解った

母さんも親父も、本人までもが気付いていないヒューバートの癖

嘘を吐くとき必ず目を伏せる


学校で何かあるのか・・・?







ーーーーー・・・


5時過ぎ頃

俺はヒューバートの部屋を訪れた

普段ならご飯の用意をしている時間だが、今日は母さんが用意している

そのため時間に余裕があり、ヒューバートは部屋で勉強をしていた

「・・・何ですか」

「そういえばもう少しで期末テストだな」

「・・・」

話をするとつくづく嫌われているという事が解る

俺はヒューバートの事が好きなのに・・・

胸が苦しい


「・・・用が無いなら出てってくれませんか」

「学校楽しくないのか?」

ヒューバートがこちらを向く

何でばれたんだと言うような顔で俺を見る

「何か嫌な事でもあるのか?」

昔から人間関係に対しては不器用な奴だからちゃんと友達は出来たのか心配だ

そういえばヒューバートが移動教室の時誰かと行っているのを見たことが無い

「友達・・・まだできてないとかか?」

「・・・心配してるんですか?今更兄貴面ですか?」

「違う・・・!俺は、お前の役に立ちたいんだよ」


そう言ったのと略同時にヒューバートから教科書や問題集が投げつけられた


「そう思うんなら何もしないで下さい・・・迷惑だ」

「ヒューバート、」

「兄さんが僕をお昼誘ったりなんかするから・・・そのうちに周りは友達ができて、完全にタイミングを失った・・・兄さんの所為で僕は余り者だ!」

俯いているヒューバートの瞳から涙が零れる

俺の所為で・・俺が少しでも一緒に居たいって思った所為で・・・っ

「ヒューバート、悪かった・・ごめん・・・ごめんな」

「もう、出てって下さい・・・早く出ていって下さい!兄さんなんて・・嫌いだ・・・っ!」


最後に放たれた言葉

気付いていたけれど直接言葉にして言われるとこんなにも辛くて苦しい言葉だなんて思わなかった


役に立ちたいという想いは君にとっては迷惑でしかなかったのかな。





弟への罪悪感

(俺の所為で辛い思いをさせている)



12 完


(130809)



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