土曜日の夕方
公園へやって来た
生来に会うために
「――・・成音、お待たせ」
「生来・・・」
あの日と同じようにブランコに座った
誰も座っていないブランコは風に揺れて音を立てた
再会した日に戻ったみたいだ
「・・・話したいことって何?」
暫しの沈黙
何を話そうか頭の中でまとめていたはずなのに
直接話すって、こんなに難しい事だったんだ
「生来、あのね・・・」
「・・うん」
深く深呼吸をする
「俺好きな人いるんだ」
だから、生来とはそういう関係になれない
“ごめんね”
最後の声が消え入りそうに震えた
どれ程長い間
沈黙が続いたのだろうか
その沈黙を生来が破った
「じゃあ、どうして・・キスした時抵抗しなかったの?」
俺が何日間も悩み続けていたこと
どうして抵抗しなかったのか
どうして縋ってしまったのか
その答えが見つかったんだ
「・・すごく最低な事だけど・・・キスされた時、好きな人が頭に浮かんだ・・・その人と・・重ねたのかもしれない」
新崎と生来を重ねたんだ
「ほんと最低だよね・・・生来の気持ちを踏みにじってこんな・・、」
視界が歪み、俯いた時
生来が口を開いた
「俺の方がもっと酷いことしてるから」
顔を上げれば辛そうに笑った生来と目があった。
道 完
(130509)
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