家に戻ると親父の靴が既にあった
「お前・・・何処に行っていた」
胸ぐらを捕まれ、また乱暴に部屋に連れていかれる
そしてそのまま床へと投げられた身体に痛みが走った
何度こうして痛み付けられただろうか
どれだけ我慢してきたのだろうか――・・・
「お前は俺の言うことだけ聞いていれば良いんだ」
腹に蹴りを入れながら親父が言ったそのひと言に何かが音を立てて切れた
「・・ふざけんな・・・っ、」
手元にあった雑誌を投げ付けると親父はその場に倒れ込んだ
立場が逆転する
「俺は生きてるんだ、お前の道具なんかじゃない・・・!どんなに辛くたって苦しくたって、明日が来る限り生きてるんだよ!大切な人と毎日を笑いながら生きてるんだ!!」
辛くたって苦しくたって支え合いながら生きてる
当たり前の幸せを感じながら生きてる
大切な人と一緒に・・・
生きてたいんだ――!
「それを・・・それをお前なんかに壊されてたまるか!!」
今まで何も言えなかった弱い自分とはさよならだ
「俺はこの家を出る・・警察に今までの事を言わないで欲しければ俺を探さない事を約束して」
これからは自分の意見をちゃんと言えるような、そんな人になりたい
そのチャンスを田中がくれたんだ
田中が俺の大切な人だ。
22 完
(130406)
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