このふたりで以後よろしく。 14



田中と付き合って何だかんだで1ヶ月が経った

外がますます冷え込んできた



最近親父の帰りが早かったり遅かったり

手を上げられてはいないが、それはきっと今ストレスがあまり無いからだと思う

あと2、3日すれば前の様に遅くに帰ってくるの日が多くなりそうだ


それまでどうか親父のストレスが溜まらなければいい




「・・・」

今日はどうやら帰りが早いらしい

帰宅して玄関の戸を開けると親父の靴があった

急いで自分の部屋へ行こうとした時、居間の扉が開いた



「威瑠、お前そろそろ髪伸びてきただろ」

「っ・・・、」

「準備したから座れ」


嗚呼、最悪




毎回髪が伸びてきた頃そう聞かれる

ただ切るだけなら有り難い


だけど違うんだ




要らない物を切る様に髪を切るんだ



そしてそれに逆らえずに俺も椅子に座っちゃうんだ






「何だこのだらしない髪は」


いつハサミが顔にあたるか解らない

顔に傷を付けない事は解ってる

だけど怖いんだ



ある程度切り終わった所で首に刃が向けられる



「お前誰かに喋ったのか?このこと」



低い声で呟かれた言葉



手の震えが停まらない



「喋って、ない・・・、」


暫しの沈黙

心臓の音が煩く響く





すると突然ハサミが床に投げられた

「――っ!!」

その瞬間

座っていた椅子を凄い力で蹴られた

派手な音を立てて背中を床に勢いよくぶつける


「・・・嘘だったらどうなるか解ってるよな」

襟元を捕まれて視線を合わせられる

目を泳がせない様にしながら必死で頷いた

そして乱暴に離した後、親父は居間から出ていった



「はぁ・・・っ、」

嘘だとバレたら俺はどうしたらいい

怖くて堪らない




何処が遠くへ逃げてしまいたい




けど俺には無理だ






こんな弱虫な俺じゃ無理だ。



14 完


(130112)



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