※オリジナル
登場人物→恵太(けいた)
郷 (きょう)
「ねぇ、ちょっとー郷聞いてるの?」
顔を上げれば恵太の顔があった
外からは気持ちの良い風や日が入ってきた
天気の良い日曜日
「聞いてるよ」
「じゃあ今何て言ったでしょうか」
「うーん・・・」
手元にあった紙に再びシャーペンで言葉を走らせる
「やっぱ聞いてないじゃん・・・まぁいいけど」
暫しの沈黙
相変わらず思うのは風が気持ち良いということ
それから
恵太がちゃんと傍に居てくれるということ
「・・恵太、歌歌って」
「いいよ」
俺は恵太の歌声が大好きだ・・・
「―・・・もし俺に声が無くなったら恵太はどうする?」
歌声を遮って出た言葉
恵太の歌はピタリと停まった
「逆に聞くけど俺に声が無くなったら郷はどうする?それでも好きだって言ってくれるの?郷は俺の歌声が好きなんでしょ?」
恵太に声が無くなったら・・・
なんて考えられないけどきっと
「きっと好きでいられるよ・・確かに俺は恵太の歌声が好きだけどそれだけが好きな訳じゃない」
「―郷には適わないな」
そう笑いながら恵太は言った
適わないって傷付くんだけどなぁ・・・
それじゃあ恵太は俺に声が無くなったらどうするの?
教えてよ・・・
「俺は、郷に声が無くなったらどうするか解らない・・・けど守りたいな」
「・・・守りたい?」
「郷が笑ってくれるのなら俺は歌を歌う、郷が書いてくれる歌詞を俺の歌声で聴かせてあげる・・その笑顔が消えないように、いつでも笑ってくれる様に、その大切な笑顔を守りたい」
不意に視界が歪んだ
例え話しなのに
適わないのはこっちだよ・・
ずっと持っていたシャーペンを握り締めて最後の1行を書き上げた
「恵太、唄できたよ」
その歌声で歌って
何度も聴かせて。
end
(121008)
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