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能と努力
 
「宮地?今日は残って練習しないのか?」

「・・・あぁ」


そう返事をして部室を出た

体育館では相変わらず良く入るシュートを放つ奴

ボールがゴールに入るのを見て思わず舌打ちを鳴らしたがボールが床に着いた音によってかき消された


緑間真太郎

俺ははっきり言ってこいつが気に入らない

俺が努力してやっとなる事の出来たレギュラーにも簡単になりやがって周りに期待されて

あんなに精密なシュートが打てるのに毎日何の為に練習してんだって思う


「あれー、宮地さんもう帰るんすか?」

「あ?」

「珍しいすね」

声のした方を見れば高尾がいた

「真ちゃんの努力って凄いと思いません?」

「・・・努力っつうか才能だろ、あれは」

「才能だったらあんなに練習しないっすよ、生まれつきあんなんできたらこえーよ」

笑いながら言う高尾の言葉に疑問が浮かぶ

練習したってあんなんできないからやっぱり生まれつき持つ才能なんじゃないか?

その才能を努力によって高めているとすればやっぱり努力という事なのか?


才能と努力どっちだ?



「・・・まぁいいや、帰るわ」

「本当に帰っちゃうんすか」

「うるせぇ、俺が練習休んだって何も変わらないだろ」

俺が居たって居なくたってお前達はいつもと変わり無く練習するんだから


「宮地先輩帰るんですか?」

いつの間にかやかましく響いていたボールの音が消えていて代わりに緑間の声が耳に入った

「何か文句あんのかよ」

「今までの努力無駄にするんですか」


誰がいつ努力やめたって?

俺が今頑張って無いって、

怠けてるって言いたいのか?


ふざけるな



「お前に何が解んだよ・・周りから期待されて、努力も簡単に恵まれて・・期待されて無い奴の何が解るんだよっ・・・!」


言い終わってハッとした

自分はただ八つ当たりをしているだけじゃないか

才能のある奴をただ僻んで、そういう奴だったのか俺は・・・


「俺は・・宮地先輩の努力好きですが」

「・・・は?」

「期待されてない訳無いじゃないですか・・努力があって期待があるから宮地先輩がレギュラーにいる、それだけです」

そう言い終わると練習に戻っていった背中にパイナップルを投げたくなった


気に食わねぇ

あいつに大切な事を思い出さされたのが気に食わねぇ



「ったく、舐めんなよ」



鞄を投げ捨てて制服のまま自主練を開始した。



end


(121014)



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