無色透明。 無



――好きだわ

そう言った新崎は微笑んでいた


そして明後日来ると言った通りコンビニに顔を見せた

何事も無かったかの様に


きっとあの言葉は新崎にとって特別な意味何か無かったんだ

それでいいはずなのに



何処かで期待していた





「神谷この後空いてる?」

あれから1週間

4時、バイトが終わるとそう聞かれた

「少しだけで良いから」

「・・わかった」


近くの喫茶店に入ってそれぞれ飲み物を頼んだ

「どうかした?いつもなら外で立ち話なのに珍しいね」

「うん、ちょっとね」

そう言うと新崎は少しの間何も話さなかった

飲み物に口を付けてテーブルに置くことを数回繰り返した後、やっと口を開いた


「先週の言葉の意味、気になった事ない?」

やっぱり、その事か・・・


「最初は気になったよ、でも考えたって無意味だからもう気になってない」

そう言ってからハッとした


「そっか、無意味か・・そうだよね・・・」

本当は気になって仕方なかった

どの「好き」なのか聞きたかった

「じゃあ俺も考えるの止めよ」

例え新崎がまだどの「好き」なのか解っていなくてもいつか教えて欲しかった


「話付き合ってくれてありがとう」

そう言って席を立った新崎に何も言えずに目を閉じた


「・・・気になってるよ今も・・」

独り言は静かに消えていった。



無 完


(120917)



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