もう夜の9時を過ぎているから明日バイト先に一緒に行こうと思ったけど藤が結城先輩の家を知っていると言うから行くことになった
「地味に近いんだね」
「近い・・のかな?」
そう言いながら藤がチャイムを押すと少しして結城先輩が出てきた
「あ・・・藤原君、と東」
「こんばんは・・東が話あるみたいです」
「夜遅くにすみません、ちょっとふたりで話せませんか?」
ひとりで待たせるのは危ないから藤は先に家に帰して結城先輩とふたりで公園に来た
「先に帰して大丈夫なの?東ひとりで帰れるの?」
「大丈夫です、ここら辺だいたい覚えたんで」
「えー俺覚えるのに何週間もかかったよ」
暫しの沈黙の後
最初は笑ってた結城先輩の顔から笑顔が消え溜め息混じりに口を開いた
「話って何?俺も暇じゃ無いんだけど」
「結城先輩は藤のことどうしたいんですか」
「どうって?別にどうもしないよ・・・前の事話聞いたなら悪いと思ってるよ、藤原君にね」
つい感情が高まって胸ぐらを掴みそうになる
だけどそれを必死で押さえた
「好きでも何でもないならあんなことしないでください・・藤は、精神的に危ないんです」
「藤原君の事大切なのはわかるよ、けど精神的に危なくさせてるのは東じゃないかな?」
意味が解らなかった
俺が精神的に危なくさせてる・・・?
「こういう事がある度ひとりひとりに言うつもり?藤原君は同性にモテるみたいだけどさ、もう少し大人になりなよ」
「・・何が言いたいんですか」
「だから、東が藤原君を縛ってるからあんなに追い詰めるんじゃないの!?」
そこまで言われて気が付いた
藤が告白された時、どうして結城先輩に相談したか
それは俺が嫉妬深いから
藤はどうしたらいいのか解らなくって結城先輩に相談をした
けれどその悩みに悩んだ末に言ってくれた事を聞かないで自分の感情だけで怒鳴り付けた
結城先輩にキスされた時、最初は言ってくれなかった
それは俺が言えなくさせたんだ
藤は誰にも相談できなくて追い詰められて腕を切ったんだ
俺の所為で・・・
「正直俺は藤原君の事気に入ってるから泣かしたりすると腹が立つんだよね・・・そんな事ばかりしてると藤原君の事貰っちゃうよ」
「っあげませんよ、絶対に!」
あげない、結城先輩にも誰にも
「それを決めるのは藤原君だ、東がどう足掻いたってどうにもならない事だってある・・・少なくとも俺は東よりも藤原君の近くに居てあげられるんだから」
それに何も言えなくなった
その事に結城先輩は呆れた様に溜め息を付いて帰っていった
ーーーーー・・・
「お帰り、遅かったね・・・どうしたの?」
心配そうに此方を見る藤に胸が苦しくなって涙が込み上げてきた
「ごめんね藤・・っ俺、恋人失格だ。」
31 完
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