あの空の下でもう1度。 26



――話し聞いてくれない人1番嫌い・・・


あんなこと言っちゃうなんて

やっぱり中学の時の事、忘れてないのかな・・・








ーーーーー・・・





「明日クラスでプリントを配って来週の水曜日までに回収お願いします、以上で委員会を終わります」


ガタガタと教室から居なくなっていく人々

自分も帰ろうと鞄を持ち上げた時、同じクラスの女子が話しかけてきた


「明兎くん明日プリントお願いね?」

「え?・・う、ん」

その女子は僕にプリントを渡してさっさと帰って行った

正直嫌だった

転校してきたばっかで委員会の事もよく知らないしクラスの人と話した事も全然無かったから・・・



「ただいま」

家に帰ると珍しくお母さんの靴があった

茶の間に行くと忙しそうにバタバタと準備していた


「ねぇ、お母さん」

聞こえて無いのか・・・

ソファーに腰掛けテレビを付けるとお母さんがびっくりしたように此方を向いた

「なんだ、明兎帰ってきてたの?声掛けてくれれば良いのに」

そう言うとまた忙しそうに他の部屋へ行った


「・・・聞かなかったのはそっちじゃない・・」




次の日

委員長に言われた通りにプリントを配って「来週の水曜日まで」ということを伝えた

教室は相変わらず連絡事項をしているのにも関わらずざわついていた

あんま聞いてないだろうと思い火曜日にもう1度「水曜日まで」と言った


そして水曜日

「明兎今日病院だから学校に休むって連絡入れとくね」

「うん」

自分が居なくてももうひとりの方が回収してくれるだろうと思っていた




「「1年2組藤原くん、至急職員室前まで」」

木曜日先生に放送で呼び出しを受けた


「プリントちゃんと配ったのか?」

「配りました」

「昨日同じ委員会の子がプリント回収出来なかったみたいだぞ、クラスの子もプリントなんて知らないって」


2回も言ったのに

それなのに、誰も聞いてなかったんだ・・・


「今回のプリントはとても大事な物で保健の先生にまで迷惑掛かってるんだぞ!?」

「ごめんなさい・・・っ」

この後保健の先生、委員会の先生、委員長に謝らされた

何度も何度も謝って怒られて

プリントを再び貰った

そのプリントは同じクラスの子が配った


先生は「もうお前には任せられない」って



その日帰ろうと思ったら教室に忘れ物をしたのを思い出して戻った


「ラッキー、俺プリント無くしたんだよね」

教室に入ろうと思ったその時、聞こえてきた声に足を止めた


「え、俺ほんとに話し聞いてなかった」

「まぁあいつの話し何て聞く人いないっしょ」

「だよなぁ、体育の時さ皆だってマラソン嫌いなのにひとりだけ休んでんの」

「毎回な、ずるくねぇ?」


休みたくて休んでるんじゃないのに

喘息で仕方なく・・・

そういえば先生はその事を皆に言っていない

どうして


まさか・・・


「クラスの皆もプリント貰ってない事にしてくれるとは思わなかったよな」

「まぁ、そんだけ嫌われてるんじゃね?」



先生までもが僕の話を聞いてくれてないんだ

皆に嫌われてるんだ

クラスの人にも、先生にも・・・



何かした?

嫌われる様なこと何か・・・




「・・ただいま」

結局忘れ物は取って来なかった

取って来れなかった・・・


「お母さん・・」

今日も珍しくお母さんが家にいた

この間とは違ってあまり忙しそうじゃなかった


なのに、



お母さんも僕が嫌いなの?

だから無視するの・・・?


「・・・」

「あ、明兎お帰り・・どうしたの?」

「・・身体測定の結果返されたんだけどさ、学校置いてきちゃった」

測ったばかりの時は身長が伸びてて嬉しかったのに、今は嬉しくなかった

「2センチも伸びてたんだよ、凄いよね・・それでもまだ156しか無いけど・・・これからもっと伸びるよね」

笑って言えばお母さんも笑って返してくれた

「大丈夫、伸びるよ」

だけどその笑顔が偽物に見えて怖かった

「目標は160なんだ」


お母さんには嫌われたくなくてずっと味方でいてほしくて無理に笑顔を作っていた。



26 完


(120808)



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