あの空の下でもう1度。 22



「・・・?」

バイトに行くために電車に乗っていると後ろから誰かに触れられた気がした

・・・気のせい?


「・・・!」

気のせいじゃない

うわ、どうしよう


気持ち悪い!



そう思った瞬間何処かから腕を引っ張られた


「大丈夫か?」

「え?」

「また触られるかもしれないからしゃがんでろ」



――誰・・・?


「お前何処で降りるの?」

「え・・・次・・です」

「じゃあ一応俺も一緒に降りるから」


誰だか解んないけど助かった


怖かった・・・



「ゴホ・・・ッ、」

「大丈夫?」

「平気、です・・ッ」

ヤバい

思い出したら過呼吸が起こった

手で器を作って必死で呼吸を落ち着かせた

落ち着いた所でいつも降りている駅に着いて手を引かれながら降りた

その時に見えた相手の定期は2駅先の物で、迷惑をかけてしまった事を悪く思った



「あんた何歳?」

何だかよく解らないけどバイト先まで送ってくれる事になり、その途中いきなり質問された

「・・18です」

「え、年上!?絶対俺より下かと思った・・あんた敬語だし背低いし」

「最後要らんこと言われた気がするけど・・僕は君の方が年上に見えてた」

何歳か聞くと高校1年生の16歳らしい・・・

「あんたは?高3?」

「・・・大学生」

「まじ?めっちゃ年上じゃん」

笑ってる・・

もういいや笑え

最初いい人に思える人って基本失礼なんだろうか


「そうだ!名前、俺広瀬って言うんだけどあんたの名前は?」

「藤原」

「下の名前」

「・・・明兎」

自分は下の名前言ってないくせに

何かだんだん高校生に見えてきた

見た目は大人でも中身は子供、下手すれば中学生みたいだ


「じゃあ明兎って呼ぶわ」

「駄目」

「いいじゃん、助けてやったんだし」

そう言われると何にも言えなくなる・・・


「・・広瀬は2駅先で降りるはずだったんだよね?こんなとこで降りて大丈夫だったの?」

「んー・・・バイト行くつもりだったんだけど後で遅れるって電話するから大丈夫」

「そっか・・ごめんね」

そう言うと暫く間があった後いきなり広瀬が笑いだした


「・・何」

「いや、明兎ってよくわからないなって思って」

「人が謝ってんのに・・」


イラついているといきなり頭に手が乗っかりびっくりした

「ごめんごめん、でも俺は助けたくて助けたんだし気にしないで良いよ」

「・・・僕年上なんだけど」

「いいじゃんいいじゃん、かわいいし」



そういえば東にもよく「かわいい」って言われるけどいったい何処が・・・

どうせなら東に「明兎」って呼んで貰いたい

東に頭を撫でて貰いたい


どうしてここにいるのが東じゃないんだろう・・・





「どうした?」

「あ・・・何でもない」


今凄く失礼な事を考えていた気がする

せっかく助けてくれたのに・・・バイトに遅れてまで送ってくれているのに・・



「・・・ごめん」


最近電話もメールもしてないからかな・・・

会いたい


声が聞きたい・・・





――会いたいよ・・・。



22 完


(120806)



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