あの空の下でもう1度。 18



苦しい

東が怖い


捕まれた腕が痛い



息が上手にできなくなって崩れる様にその場に膝を着くと相手がやっと停まってくれた


「はぁ・・っ、は」

「っごめん・・薬ある?」


苦しいのを紛らわす様に胸元をぎゅっと押さえながら鞄を渡すと吸入器を探して渡してくれた


「本当にごめん・・どうしよう・・・、」

青くなる東を見て少しだけ安心した

いつもの優しい東だって


「・・もう大丈夫だから」


家に着くまで東はずっと下を向いて歩いてた

何を話しかけても「うん」と言うだけだった


部屋に入って一緒にベッドに座るといきなり謝られた


「ごめん・・頭の中真っ白になって・・・最近藤過呼吸も喘息も起きてなかったのに」

「いや・・うん、最近はストレス無いから過呼吸になってないけど最近走っちゃって喘息起こしたからまったく起きてないわけでも無いよ」

「走ったって・・いつ?」

―あぁ、もうどうなったっていいや

あの日起こった事ちゃんと言おう・・・


「雨降った日、傘持ってなくて結城先輩の家が近いって事で寄らせてもらったんだよね」

「うん・・・」

「眼鏡外した所為かな・・余計に先輩の好きな人に似てたみたいでいきなりキスされて・・怖くて走って逃げた・・・その逃げる時にネックレス引っ掛かって千切れたんだよね」

そう言い終わると東に引き寄せられて肩に顔を埋められる

微かに泣いているのがわかった


「最初から、そう言ってくれたらこんなことしなかったのに」

「うん、ごめんね・・・でもね結城先輩次の日そのネックレス持ってきてくれたんだよ・・だから悪気無かったと思うしどう説明していいか解らなかった」

首の噛み痕に触れる東の手は本当に悪い事をしてしまったかの様に震えていた

その手を取って強く握った


「嫌じゃ無かったよ、嫉妬されるの・・前よりも好きになってもらえた気がするから」

「自分でもどうしたらいいか解らない程好き・・大好きなのに・・・っ、あんな事、」

「もう気にしないで」

そう言うと東がゆっくりと顔を上げた

目元が赤くなった瞳と目が合って涙を拭いてやりながら笑った


「僕も大好きだよ」



そっと唇を重ねる

会ってから今日始めてキスをした

久しぶりのキスだった。



18 完


(120715)



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