※中学時代のお話
「下手くそ」
終了の合図と共に吐き出された言葉
横を通り過ぎる人
今日もまた言われた
部活を始めて2週間
初心者という訳では無いのに中々上手くなれずにいた
ーーガタン
「・・駄目だ」
部活が終わってからもひとりで練習した
それなのにシュートが中々決まらない
もう1度挑戦しようとボールを持ち上げた時体育館の扉が開いてそちらに意識を向けた
「あれ?まだ残ってたの?」
「あ・・・うん」
「えっと・・・神谷だっけ?俺は結城って言うんだけど・・あ!結城って名前じゃなくて苗字だから、ここ大事」
何だか可笑しくて笑うと結城も笑いながらこちらに近寄ってきた
「良かったら一緒に練習しよ?」
これが結城との出会いだった
「神谷はいつからバスケやってるの?」
ガコンと音が響く
結城のシュートは2回に1度は入っていた
「一応・・・小6から」
「そっかぁ、俺は中学で始めて」
「・・・上手くていいな」
ーーガコン
やっと入ったボールは静かに床へ落ちていった
「神谷の努力はいつか報われるよ」
ーーーーー・・・
「結城って最初は皆に良い顔しといて後から酷いんだって」
「マジで?」
人間は噂が大好きだ
「神谷って最近結城と仲良いっけ?気を付けろよ」
結城の何を知ってそんなことを言ってるんだ
あの日の慰めてくれた言葉を今でも覚えてる
「・・・結城はそんなやつじゃない、何も知らないくせに勝手な事ばっかり言ってんな」
―この日から人生は大きく変わった―
机の周りに散らかった自分の教科書に落書き
「あいつみたらマジ吐き気する」
飛び交う罵声
「結城も何か言ってやれば?」
――裏切り
俺 の し た 事 は 間 違 え で し た か ?
部活が終わった後、毎日一緒に練習していたのにその日を境に現れなくなった。
絶 完
(120702)
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