あの空の下でもう1度。 04



「どうだったっ?」

「受かったよ」

「そっ、か・・おめでとう!」

素直に喜べなかった

もう東京に行ってしまうことが決まってしまったから

そうして無理に笑顔を作っているとその事に気が付いたのか藤は少し複雑な顔をして話しはじめた

「落ちると思ってたんだ・・ラインもギリギリだったし面接でも上手く応えられないところあったし・・・」

「うん・・・」

「すごく不安だったけど東が励ましてくれたお陰で結果がでるまでの間少し楽に過ごせた」

眉を八の字に曲げて微笑む姿を見て素直に喜べなかった自分に嫌気が差した

藤がどれ程その大学に行きたかったか知っていたはずなのに


「藤、ごめんね・・・おめでとう」

次はちゃんと笑顔で言うと本当に嬉しそうに「ありがとう」と言ってくれた


「合格祝いに何処か行こうか?あっちに行くのはいつぐらい?」

「4月の初旬ぐらいかな」

ということはもうあまり時間が無い・・・

「・・どこか行きたい所ある?」

「・・・東の家行きたい」

予想外の返答に言葉を失うのと同時に顔が赤くなるのを感じた

「えっ・・と・・・俺んちなんかでいいの?」

「東の家だから良いんだよ」

赤くなった顔を見られないように俯きながら顔に手を当てるがすでにばればれだろう

「・・いつ暇?」

「明後日とかかな」

「朝向かえに行くね」

できるだけ長い時間一緒に居たくて「朝」と言ったが何も異議は無いようで承知してくれた


「・・いつまで顔赤くしてるのさ」

「っ・・・だって俺の家来たいとか・・嬉しいじゃん」

「東の家では色んな事あったから・・・大切な思い出だよ・・」

嬉しくて、愛しくて、それを表す様に抱き締めると藤の腕が俺の背中に回されて更に密着した

「・・泣きそう」

「泣きなよ」

肩に顔を埋められ、そこから鼻を啜る音が聞こえた

「当日は我慢する・・・だから今日だけ泣かせて・・」

当日は笑顔で別れたい

その思いは俺も同じで承知の言葉の変わりに頭を包み込み子供をあやすかの様にリズムを取ってやった

「っ・・ずっと、一緒に居たい」

「うん・・俺も・・・」

「・・好き・・・」

「俺も」


抱き締める力を強めると苦しそうな声が泣き声と混じり漏れるがもっととせがむ様に服を捕まれ苦しすぎる位に抱き合った。



04 完


(120613)



戻る


 
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -