多分好き
「いい加減怒るぞアスベル」
「すみません」
今目の前で「怒るぞ」とか言いつつもう怒っているのは社会の先生であり剣道部の顧問であるマリク先生
「何だ最近ぼーっとしてやる気あるのか?」
「あります、次からはちゃんと集中します」
怒られている理由はしっかり集中せずに同じ失敗を繰り返しているから
集中できていないのはきっと日曜日の出来事の所為
―どうしてキスをしたのだろう・・・
そんな事が頭の中でずっと周っていた
「そういえばお前の弟は部活に入らんのか?」
今丁度考えていた人物が話に出てきてドキッとしてしまう
「えっと・・・多分入らないと思います・・何か入りたいだろうけど家の事で忙しいから」
「お前も手伝ってやればいいだろう」
「いえ・・俺は何もできませんから・・・ヒューバートにもそう言われましたし」
この間言われた言葉を思い出し落ち込んでいると先生が少しキツイ口調で話始めた
「何も出来ないなんて誰が決めた?」
「え?」
「出来ないと決めているから出来ないんじゃないのか?お前はもっとヒューバートと話し合うべきだ、じゃないと何も変わらないぞ・・・あいつのやりたいことに協力してやるのがお前の役目だ」
その言葉は俺の考えを変えるのには十分だった
お礼を言う代わりに深く頭を下げると今日はもう帰っていいと言われ家に帰った
「ヒューバート、いるか?」
「・・早かったんですね」
茶の間を覗くと探し人は直ぐに見つかった
それと同時に心臓が何かに打たれた様にドクンと脈打った
「あ・・・お前何か部活やりたいとか思ってないか?」
「・・・思ってません」
嘘だと直ぐに解った
昔からそうだ
嘘を付くときは必ず目を伏せる
「やりたいならやっても良いんだぞ?」
「別に良いです・・・どうせできませんから」
そう言って部屋へと向かったヒューバートの後ろ姿をただ見ている事しか出来なかった
あぁ、まただ
また思いが通じなかった
1番伝えたい事を伝えられずにヒューバートを見失ってしまう
まるで失恋したかの様に心が痛い
―そうか、恋してるんだ・・
自分の思いがわかると今まで解らないフリをしていたのであろう好きという気持ちは誤魔化す事ができなかった。
多分好き
(こんな事許されない)
06 完
(120513)
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