あの空の下でもう1度。 42



「俺が藤の分走ることになったよ」

「あ、ほんと?ありがとう」

体育大会前日

僕は最近喘息が酷く医者にもあまり走らない方が良いと言われリレーの所を穴埋めしてもらう事になり、当日も基本見学で皆に迷惑を掛けてしまうのが申し訳無く思った

「大丈夫?」

「うん・・走らなければ問題無いよ」

「それ持とうか?」

明日の準備の為それぞれ係りごとに仕事をしていて僕らは用具を出したりする係り

今僕が手に持っている物はそこまで重くない

そんなに心配されると何か・・・


「そこまでひ弱じゃないから、東も仕事戻りなよ」

「ん・・・ごめん」

しゅんとして用具室へと走って行く東

その後ろ姿を見て自然と溜め息が出た


「・・そんなに頼りないのかな・・・」


用具を指定された場所に置き、ちゃんと全部あるか確認していると東が用具を持ってきた

「これここ?」

「うん、東ので全部揃ったよ」

一応東が持ってきたダンボールの中を確認するためしゃがんでいると近くで騒がしい声がしてそちらを見るとどうやら後輩が騒いでいる様だった

呆れつつ中身を確認している時だった


「わっ―・・危ない!」

「・・・っ―!」


背中に痛みが走った

どうやら先程騒いでいた後輩が積み上げたダンボールにぶつかった様で、突然過ぎて「危ない」と言う声に直ぐに反応できず落ちてきた物に当たってしまった


「っ先輩ごめんなさい!」

「―・・・大丈夫だから」

「藤、平気なの?」

またそうやってすぐ心配する・・・

「平気だって」

「でも・・・」

「・・・それ片付けたら係りの仕事終了だから後お願いします」

「はいっ」


立ち上がりその場を後にすると東も着いてきた


「背中汚れてる」


そう言って背中に付いた砂を払ってくれた


「痛くない?」

「・・・うん」

「一応保健室行こうか?」

「・・東はどうしてそんなに心配するの?」

その場に立ち止まり俯いて言うと東に頭を撫でられる

「心配しちゃ駄目なの?」

「そうじゃない、けど・・・」

「俺は藤が大事なんだよ?だから誰よりも心配で誰よりも大切」

頭に置かれた手が頬へ滑り顔を上げさせられる

顔が近付いて唇が触れそうになるがここが外だということを思い出して後ろへ下がった



「東・・・ありがとう」

そう言って微笑むと東も微笑み返してくれた




「僕も東が誰よりも大切だよ。」



42 完


(120505)



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