「ねぇ藤、明日の休日スポーツ用品見に行くの付き合って」
金曜日のお昼に言った事
急には関わらず藤はOKしてくれて今に至る
少し遠くに来るのは始めての所為か楽しみで待ち合わせの時間より早く来てしまった
今の時間ならかなり待つ事になるだろうと思ったけどそうでも無くて藤も結構早く来た
聞けばいつも時間に余裕を持って15分〜20分は早く目的地に着くようにしているらしい
きっちりした性格なんだと改めて思った
「私服だね」
「?当たり前じゃん」
何度か見た事はあるけどやっぱりまだ馴れなくて少しドキドキしてしまう
「行こっか」
「うん」
歩き出した時、ふと手を繋ぎたいと思いに駆られる
だけど周りに人がたくさん居るからそんな事流石にできなくて、でも視線は藤の手へと移っていた
すると今日は少し気温が高いのに関わらず長袖であることに気が付いた
「藤暑くないの?」
「・・平気」
「暑くなったら脱ぎなよ?」
そう言うと黙り込んでしまってどうした物かと不安になっていると「脱げないから」という言葉が返ってきて腕を出せない事を思い出した
「そうだったね・・・ごめん」
「良いの・・・気にしてくれてありがとう」
そんな会話をしていると目的のお店に着いてある事を思い出す
このお店に来た理由は体育大会に備えて色々用意しときたかったから
体育大会といえば半袖にならなくてはいけないしならないのはかなりキツイ
藤はどうするつもりなのだろうか・・・
「東はすごいよね」
「え?何が?」
「体育大会の為にそこまで揃えて必死になれるのが」
「俺ね、身体動かすの大好きなんだぁ」
目的の物を手に持ち会計へと向かう途中、視界に入ったものに足が停まる
「どうかした?」
「ん?何でもないよ、後払うだけだから外で待ってて良いよ」
藤が外に行ったのを確認して視界にある物も手の中に加えて会計を済ませた
「おまたせ」
「うん」
「ちょっと左手出して」
荷物を足元に置いてそう言うと藤は「こう?」と言いながら手を出した
その手を優しく包み込む様に取り手に隠し持っている物を腕に嵌めた
「買い物付き合ってくれたお礼」
「リストバンド?」
「うん、これで腕出せるよ」
藤は何だか申し訳なさそうで俺が「気にしないで」と言うと暫し考えた後納得した様に微笑んだ
「ありがとう」
「どういたしまして」
「大事にする」
リストバンドに触れ目を細めながら言う姿を見てると触れたくなってしまいそれを誤魔化す様に頭を撫でながら荷物を手に持った
「髪さらさらしてる」
「・・そお?」
手を離せば髪が絡まる事なくすんなり離れていった
「何か・・・」
「何?」
「・・何でもない」
歩き出すと藤も後ろに付いてきた
何だか髪と同じ様に藤も離れて行ってしまう気がした
―東京に行く
あの言葉はいつになったら言い出してくれるのだろうか
もしかしたら言ってくれないのかもしれない
そうなったらどうしよう・・・。
41 完
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