ただ一緒にいたくて。
「僕は要らない子だったのでしょうか」
宿で休んでいる時だった
疲れているからだろうか、ベッドに身を任せながらヒューバートが普段言わない様な事を言ってきたのだ
「どうしたんだよ急に」
隣に腰を下ろしてヒューバートを見ると寝返りを打って顔を背けられてしまった
「こんな僕でも役に立てる様に必死に勉強してきた・・・けれど結果的に捨てられた」
「捨てた何て、そんな訳無いだろ!?」
「捨ててないと言うのなら他にどんな理由があったと言うのですか?」
捨ててない
そんな事解ってるのに他の理由が解らなくてつい黙ってしまう
「・・僕の努力はいつだって報われない」
「俺だって・・・お前の方が領主としてふさわしいと思ってる・・お前の努力は知ってる」
そう言うとヒューバートはいきなり起き上がり怒鳴るもんだから驚く
「違うんですよ・・・!領主になりたい訳じゃない、兄さんの方が領主に向いている・・それに兄さんは僕には無い物を持ってます」
ヒューバートは俯くとベッドのシーツを強く握った
「僕は、ただ・・・っ」
身体の力が抜けた様に俺に寄りかかって肩に頭を乗せて抱きついてきた
「ヒュー・・・、」
「僕はただ兄さんと一緒にいたかった・・」
「そんなの・・俺だって一緒だ・・・」
抱き締め返して頭を優しく撫でる
「俺はヒューバートを要らないなんて思った事は無い」
「そんなの・・・っ」
「信じろ」
オズウェルでそう躾られたのか、それとも養子に出された所為か昔と比べて随分と疑り深くなったヒューバート
そんなヒューバートに信じて貰いたくて真っ直ぐに瞳を見つめる
「兄弟が居る人なら要らないと思う感情があるのは当たり前なのに兄さんは弟である僕に抱くべき感情が違う・・・本来と真逆だ」
「それはお前だってそうだろう?俺に対して特別な感情を持ってる」
兄弟に抱くべきでは無い感情
それはもうとっくの昔から気付いていた
だからこそ離れたくなくて1番近くに居たかった
「全てが終わったらあんまり会えなくなる・・・だけど会いに来るときは家族として・・恋人として会いに来い」
「兄弟で恋人・・・変な感じがしますね」
「嫌なのか?」
「・・嫌じゃ無い・・・と思います」
最後の最後に照れ隠し
顔を赤くしている姿が可愛くて愛しくてどうしようもないくらい好き
その想いを込めて唇をそっと重ねお互いの体温を確かめ合った
「要らない子なんてこの世に居ないからな」
不安になったら何度でも言うよ
君は必要なんだって。
end
(120422)
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