あの空の下でもう1度。 36



「東はここで待っててね」

「ほんとに一緒に行かなくて良いの?」

「大丈夫だよ」


そう言って家の中に入っていく藤を見送った


そわそわと落ち着かなくてその場にしゃがんだりまだ出てこないのか家の方を見たり挙動不審な行動を取っていただろう

何度も落ち着けと頭の中で繰り返していると案外早く藤が戻ってきた

「東」

「早いね、どうだった?」

「お母さんが会いたいって」

立ち上がりながらその言葉を聞いて目線が合いそのまま動きが止まってしまう

「へ?」

「どんな人なのか見てみたいって」

「え、や・・無理っ・・・そんな準備してないよっ!」

「大丈夫だよ」

何がと聞く前に藤は俺の手を引いて家の中へと進む

「や、あの・・ちょっ、と」

混乱したまま引っ張られあっという間に藤の親が居る所にたどり着いてしまった

「・・由宇くん?」

「は、い」

久しぶりに見た藤の親は昔よりも優しい瞳をしているように見えて藤と似ていると思った

「これも予想正解ね」

「え・・ほんと?」

藤と親は俺には良く解らない会話をしていて頭に“?”を飛ばしていると藤の親がこちらに向き直り何を言われるのかという緊張からドキッとする


「この子我が儘でしょう?」

「いや・・まぁ、」

嘘は言えなくて曖昧に肯定すると藤に睨まれた

「大変だろうけど由宇くんなら安心ね・・明兎の事よろしくお願いします」

優しく微笑まれた顔に安心して静かに、だけど力強く返事をした







「我が儘で悪かったね」

昨日来た公園

良く遊んだ想い出の公園にまた来ていた

「藤は俺だけに我が儘だよね」

「・・・」

「他の人には優しい・・・だから何か俺には本性出してくれてるみたいで嬉しい」

ブランコに座って空を見上げる

「そんなんじゃ・・無いよ・・・」

小さく呟かれた声により視線が藤へと戻される

藤は俯いていて表情が見えない

「東にだと甘えちゃうんだ・・信頼してるって言うか頼れるって言うか・・・好き・・だから・・」

「ん・・・そっちのが嬉しい」

ブランコから立ち上がり藤の前へ立って顔を上げさせる

細められた瞳に吸い込まれる様に唇を重ねた


「・・・こんな僕を受け入れてくれるのは東だけだ」

「他の人には受け入れさせない」


「ねぇ、東・・・キスとか・・もっとしたい・・・かも」

「っ・・・」

不意に言われ赤くなると藤も自分が何を言ったのか解ったらしく徐々に赤くなり最終的には耳まで真っ赤にした


「あぁ、もう・・・!」

「ご、ごめん・・っ」

藤の腕を引っ張り引き寄せると油断していたのか藤はバランスを崩して倒れる様に俺の胸へ収まった


「それじゃあ今日うちおいでよ・・親いないし」

「で、も・・」

「帰さないから」


耳元で言うと再び赤くなった耳に愛しさを込めて唇を落とした。



36 完


(120422)



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