すべてが遅くて。
※前回の続き。
ラントに来たのは久しぶりになる
それなのにこの晴れない気持ちはきっとあの出来事の所為
今日は書類を書いて貰おうとやって来たのだが中々中に入れず花壇をボーッと眺めていると突然後ろから声を掛けられ振り返った
「・・ソフィ」
「どうしたの?」
「いえ・・クロソフィの花が前回よりも増えたなと思い眺めていただけですよ」
ソフィは特に疑う様子も無く嬉しそうに笑うと花の手入れを始めた
「・・あ」
「どうかしたんですか?」
「たんぽぽ」
ソフィが見る場所を見るとそこにはたんぽぽが咲いていてしかも双子の様だ
「仲良くてアスベルとヒューバートみたい」
「え?」
「たんぽぽの花言葉ってね、飾り気の無さなんだってシェリアに教えてもらったの・・ますますふたりみたいだね」
そうにこにこして言うソフィに少し心が傷んだ
「ですが僕らは双子じゃないですし・・」
「でも兄弟でしょ?このたんぽぽさんみたいに」
「そう・・ですね・・・」
そんなものもう壊れてしまったけれども・・・
「そろそろ行きますね」
そう言って中に入り領主・・・つまりは自分の兄がいる部屋の扉を叩いた
「はい」
「・・ヒューバートです、書類をお願いしたいのですが」
暫しの沈黙の後「どうぞ」と返って来て扉を開けるとそれに合わせて兄さんもこちらへ来た
「久しぶり・・だな」
「えぇ・・」
ぎこちない会話を交わしながら書類を渡すと兄さんはそれを机に置くとこちらに向き直る
「そんな他人みたいにしないでくれ」
この人は誰の所為でこうなってると思ってるんだ・・・!
「・・他人でしょう、7年前から」
「他人何かじゃない!兄弟だろ!?」
「あんな事しておいてそんな事言えるんですか!?」
今までで合わせないでいた目でキッと睨み付けると兄さんは一歩後ろへ下がり俯いた
「あの行為を僕は他人だからしたと受け取りました・・・兄弟と思ってるのならあんな事出来ないでしょう?」
「違うっ!・・・あれは・・」
また暫く沈黙が流れると兄さんは決意した様に顔を上げると後ろへ下がった分を詰めて真っ直ぐに瞳を見つめて言った
「俺はお前が好きなんだよ」
好き
その言葉をもっと早く聞けていたらどれ程嬉しかったか
「そんな事今更信じれと?」
「こんなの可笑しいって解ってる・・けど、」
「ほんと、可笑しいですよ・・・!」
言葉のブレーキが聞かなくなり思ってもいない事を口走る
「僕は兄さんが大嫌いですよ!7年前からずっと・・・っ!」
言った言葉はもう訂正が付かない
放心状態の兄さんの横を通り僕は足早に机の前へ行くと書類と一緒に机を乱暴に叩いた
「早く書類書いて下さい!また後で取りに来ますからっ」
そう言い残し外へと出ていった
今は一緒に居たくない
涙が溢れそうだから
「何で今更・・・っ」
言葉が出たのと同時に流れた涙
下を向い時不意に目に入ったたんぽぽに余計視界が歪むばかりだった
「僕は取り繕ってばかりだ・・っ飾り気が無いのは兄さんだけだ・・・!」
大嫌いの裏に隠れた本当の思い
その思いは誰にも伝える事無く自分の中で自然と消えていくか、或いは言い放った言葉と共に残り続けひとりで永遠と苦しむのだろう。
end
(120422)
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