自分にできること。 | ナノ






自分にできること。

用事等で遅くなり家に帰るとヒューバートがテーブルに顔を伏せて寝ていた

そのテーブルの上にはノートや教科書が乗っていて勉強していた事が解る

「風邪引くぞ・・」

ソファーの背に掛かっていた毛布を持ってきて肩に掛けてやると眼鏡を掛けたまま寝ている事に気が付いた

邪魔じゃ無かったのか疑問に思いながらずれている眼鏡を取ってやりテーブルの上にそっと置いてやる

シャーペンも握りっぱなしで相当眠かったのだろう

「ご飯どうすっかなー」

いつもならヒューバートが作ってくれているのだが今日はお疲れの様で何も用意されて居なかった

起こすのも悪いし自分で作ることにして何か俺でも作れるものは無いか探すため冷蔵庫を開ける

「んー・・・何作れるんだろ」

中身をガサガサと漁っているとボールに何か入っているのを発見した

それを取り出すと鶏肉が入っていてどうやら味を染み込ませている様子

「今日これだったのか?」

台所にそれを載せようとすると不注意で手を滑らせてしまい大きな音を立てて床に落ちた

「・・兄さん?」

その音で目を覚ましたらしいヒューバートが何事かとキッチンへやってきた

「・・・それはもしかして付けておいた鶏肉ですか?」

「き・・気のせいじゃないか?ほら、お前今眼鏡掛けてないだろ?」

「気のせいと言うのなら今から至近距離で冷蔵庫の中確認しますが」

「ごめんなさい」

頭を下げて言うとヒューバートは溜め息を吐きながらその鶏肉を拾いボールの中に戻し始めた

「あーあ、どうするんですかこれ、今日の晩御飯だったんですよ?・・寝てしまっていた僕も悪いですが」

「本当にすまない・・・洗ったら食べれるか?」

「味落ちますがそれでも良いなら・・」

「構わない」

ヒューバートは広い終わったそれを流しで洗い始めた

「そこキッチンペーパーで拭いてもらっても良いですか?」

「あぁ」

言われた通りキッチンペーパーで拭くと何だかベタついている気がした

「このベタつきはどうしたら良いんだ?」

「後は僕がやっときますから兄さんは座ってて下さい」

役に立てなかった事に落ち込みながら椅子に座った

テーブルの上には先程から乗っている教科書とノート

せめて勉強を教えられたら良いのにと思うがヒューバートは俺でも解らない様な問題ですら簡単に解いてしまう

家事も簡単にこなすから時々ヒューバートの方が兄なんじゃないかと思う

ますます落ち込んでしまい視線を落とすと眼鏡が目に入りヒューバートが掛けていない事に気が付きキッチンへ持って行った

「ヒューバート眼鏡無くて大丈夫だったか?」

「あ・・ありがとうございます・・・大丈夫ですよ、無くても全く見えないって訳じゃないですし」

「そうか、なら良かった」

眼鏡を掛けたのを確認して茶の間に戻ってテーブルの上を見る

汚れたら困るだろうと思い教科書とノートなどを邪魔にならず汚れない場所へ置いた

暫くするとヒューバートが料理を持って茶の間に戻ってきた

「片付けてくれたんですか?ありがとうございます」

料理を並べ終わり椅子に座ったヒューバートを見て手を合わせていただきますをした

「今日は唐揚げだったんだな」

「はい・・遅くなってすみません」

「俺こそ疲れてるのに作らせて悪い」

それから会話は途切れそろそろ食べ終わる頃に俺は再び口を開いた

「なぁ・・俺これからがんばってできる事はやるからな」

「何もしないでください、余計な事をするに決まってます」

その言葉に落ち込み下を向くとヒューバートは食べ終わったのか食器を重ね流しに置きに行った

暗い気持ちで箸を動かしていると流しにいるヒューバートから声が掛かった

「兄さんは何かをしようとしないで良いんですよ・・自然と思いついた事を自然にして・・例えばさっきみたいに寝ている僕に毛布掛けてくれたり眼鏡持って来てくれたりテーブル片付けてくれたり、それだけで充分助かりますから・・・」

「ヒューバート・・・」

食べ終わった食器を持って流しへ持っていくと洗い物をしているヒューバートがこちらを向き微笑んでやるとばつが悪そうに目を反らした

「洗い物するよ・・」

流しに食器を置いて後ろから抱き締める様に手を伸ばし泡だらけのヒューバートの手と自分の手を重ねる

「・・割らないでくださいよ」

手からスポンジを受け取りヒューバートが逃げられない様に密着する

「じゃあそこで見張っててよ」

「まったく・・貴方という人は」

そう言って微笑んだヒューバートの髪にキスをして洗い物を始めた



その後結局集中できずヒューバートにちょっかいを出して怒られた事は言うまでもない。



end


(120404)



戻る