あの空の下でもう1度。 31



朝目が覚めると身体がダルく昨日から続いている所為もあってあまり動きたくなかったが学校を休む訳にもいかず準備を始めた

洗面所へ行き顔を洗う

顔を上げふと鏡を見ると首に痕を付けられたことを思い出した

その痕に触れ、結構目立つと思いながら昨日お母さんにバレてないか気になった


「まぁいっか・・・」





--------・・・


いつも登校中に東と会うのに今日は会わなかった

休みかと思ったが教室に入ると席に座っておりいつもより早く来た事が解った


「東おはよう・・今日早かったんだね」

考え事でもしているのか聞こえて居ないみたいだ

「・・・東?」

顔を覗き込むと東はハッとした様に背筋を伸ばした

「あ・・・うん、おはよう」

「考え事?」

「んー・・」


言いたくない事なんだ・・・


自分の席に着こうと足を運ぶと腕を引かれいきなり首の痕に触られる

「ちょっと、」


「大丈夫だよ」

何が大丈夫なんだ・・・

確かに今は教室に人が少ないが逆にそれが危ない気がした


腕を掴んでいる手がスルッと僕の手まで滑るとそのまま握られ首は何度も擦るように撫でられぞわぞわする

終いには鎖骨の辺りまで手が入り誰かに見られて居ないか等のドキドキが最高潮に達しその手を振りほどき一歩後ろに下がった


「・・やめて」

「あ・・・ごめん」


赤い顔を見られたくなくて下を向きながら自分の席に座った


「・・怒ってる?」

「怒ってない」


顔を覗き込もうとする東に「見ないで」と言った時には遅くて微笑しながら「ごめんね」と言われた


「はぁ・・女々しい・・・」

「良いじゃん、かわいいよ」

「実はそれ全く嬉しくないよ」

そう言うと目が合って何だか可笑しくなりふたりとも笑った


「トイレ行ってくる」

「うん、行ってらっしゃい」


トイレの手洗い場の鏡で自分の姿を見た

未だ少し赤い顔

首の紅い痕

他人から見たらどう思うのだろう・・・


「なぁ、びっくりした」

いきなり出入り口から声が聞こえて肩がびくっと動いた

そちらを見ると男子がふたりで話していた

違うクラスの子だ

「あいつモテるらしいから知らぬ間に恨みでも買ったんじゃね?」

「ありえるー!人の彼女取ったとか?」

笑いながら去っていったふたり

何の話をしていたのか気になりながらトイレに入ると目に入った光景により何の事かを理解した

そこにはばらまかれた教科書

不意に自分がいじめられていた時の事を思い出した


「・・・」

その教科書を拾い上げ名前を見て驚いた

「東のだ・・」

先程の話からして東は他のクラスにまで名前が知れ渡るほど人気があるんだ・・

そんな人がほんとに僕なんかで良いのか不安になりながらその教科書を全て拾って教室に戻った


「・・東これ」

「え?あ・・何処にあった?」

「トイレに」

「そっかーあって良かった、ありがと」

そう言って笑う東

・・・何で・・

「これしたの田中だよね・・どうして言ってくれなかったの?」

「だって・・そしたら藤は自分の所為だって自分を責めるでしょ?」

「・・僕の所為じゃん」

「違うよ」

東は口調がきつくなりながら少し乱暴に教科書を仕舞った


今の僕は東の嫌いな僕だ


こういう所直さなきゃいけないんだった・・


「頼まれてもいないのに俺が勝手に助けて目付けられただけだから藤は気にしないで・・・」

「わかった」


にこっと笑って見せる

今上手に笑えているのだろうか

変に思われてないだろうか


東の顔が見られないから解んないや


頼まれてもいないって僕はずっと助けて欲しいと思ってたよ

それが通じた様に東が助けに来てくれた



それでも僕の所為じゃないって言いきれる?


東も心の何処かで思ってるんじゃない?





僕の所為だって。



31 完


(120404)



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