敬語禁止令。
「なぁヒューバート、敬語使わないで話してみてくれないか?」
「・・?嫌です」
そう言うと兄さんから不満の声が掛かり理由を聞かれた
「これはもう習慣でして、嫌と言うより無理なんです」
「じゃあ敬語禁止な」
「何ですかそ・・!」
言い掛けた言葉が唇を塞がれる事によって遮られる
数秒して唇が離れると意味が解らずただテンパるしかできなかった
「敬語で話したらキスするからな」
どうしてそうなったのか疑問に思いながら極力話さない事を決めた
「ヒューバート」
「・・・」
「ヒュー」
「・・・、」
「ヒュー様?」
「う・・うるさ、いっ!」
敬語になりそうになりながら何とか押さえると兄さんは楽しそうに笑っていた
いつも通り喋れないもどかしさにイライラしながら早足にその部屋を離れると何故か兄さんまで付いてくる
歩いていると前にマリクさんが見え助けて貰おうと声を掛けた
「マリクさん!あの、」
マリクさんが振り向いた瞬間兄さんに肩を引かれ後ろからキスをされた
人前で・・・!
仲が良い事とか言いながらニヤニヤしているマリクさんに顔が赤くなる
「え、っと・・兄さ、っん!止めてくださ・・・っ!」
どうやら人を「さん」付けするのも駄目らしい
「兄、が・・敬語、で話すとキスする、って・・・言って何とかしてく・・れない?」
所々躓きながらなんとか敬語にならずに言うとマリクさんは笑いを堪えているのか口元を押さえて肩を震わせていた
「すまない、面白いからこのままにしておくぞ」
「〜!」
もう笑うなら笑ってくれと思いながらもう絶対に兄さんを許さないと決め口をきゅっと結び先程までいた部屋に戻った
やはり兄さんは付いてきて部屋のベッドに顔を埋める様に俯せる
まるで拗ねた子供の様だと自分で思った
すると兄さんも隣に来て僕の身体を仰向けにしようとしだす
「そんなに怒んなよー」
「怒ってません」
「あ、敬語になった」
「っ〜もう!好きなだけキスすれば良いじゃないですか!」
そう言いながら顔をあげると兄さんに両頬を押さえられ目線が合う
「そうする」
つい先程までふざけていたとは思えない声色に不覚にもドキッとしてしまいあっという間に口付けられた
斜めの体勢からでは苦しくて自分で身体を仰向けにすると兄さんが上に覆い被さり腕をベッドに押さ付けられ直ぐに舌が中に入って来た
「んっ・・!」
暫く舌を絡め肩で息をするようになった頃には唇が離れ再び目が合うと兄さんは微笑んで言った
「キスしたかっただけなんだ・・許して?」
何故だろう
さっきまで怒っていたなずなのにその笑顔を見ると全て許せてしまう
「・・今回だけ特別ですよ」
そう言って再び唇を重ねた。
end
(120403)
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