君の為なら。
「兄さんご飯は?」
「あー・・・すまない、先に食べててくれ」
「勉強ですか?」
「あぁ」
「そうですか」
ヒューバートは迷惑にならないよう部屋の扉を静かに閉めて茶の間に戻った
アスベルが受験生になってからヒューバートはひとりでご飯を食べることが多くなった
それが凄く寂しくて、でも口に出せなくて代わりに溜め息ばかり出てくる
アスベルもそんなヒューバートの気持ちは何となく気付いてはいたが志望する大学に合格する事が最優先された
「よし・・・」
勉強が一段落付き夕食を食べに茶の間へ行くと、ヒューバートはもう食べ終わったのかソファーに座って本を読んでいた
時計をちらっと見るともう8時を回っており先程から1時間もたっていた事に初めて気付く
「ご飯温めますか?」
すっかり冷めきってしまったご飯
しかしこれは自分の所為
それなのにわざわざヒューバートの読書を中断させるのは悪いと思い遠慮しておいた
「兄さん毎日勉強大変そうですね」
「お前も毎日料理大変そうだな」
「それは全然・・」
アスベルは帰ってきてから殆どの時間を勉強に宛てているため家事はヒューバートに任せっきりという状態が何日も続いている
「来年はヒューバートも受験生か」
「そうですね」
「その時は俺が今のお礼をするからな」
「ありがとうございます」
会話が終わると静かになった部屋に食器と箸が当たる音と時計の音がリズム良く響いた
ヒューバートは本を読みながらその音を聞き暫くすると食器を重ねる音が聞こえ見なくても食べ終わった事が解る
ジャーっと水の音が聞こえ、昨日食器は水に浸けておくよう言ったのを覚えていてくれた様だ
こうして音を聞いて相手の行動を読むのも面白いと思っていると足音がこちらに近づいて来て何か用かと思い後ろを振り向いた瞬間ヒューバートはアスベルに後ろから抱きしめられた
「な、っ何ですか?」
「美味しかった、ありがとう」
その言葉に、温もりにドキドキしているのがバレないように少し下を向くと目に入ったアスベルの腕を無意識に握ってしまい、しまったと思うと同時にもう良いやと思いヒューバートは身体の向きを変え甘えるように抱きついた
アスベルは立った状態の為ソファーに膝立ちのヒューバートが自分に抱きつきやすいように身体を屈めてやる
「今日は甘えん坊だな」
「・・兄さんが悪いんです」
「ん・・・寂しい思いさせてごめんな」
こんなにくっついてはお互いの鼓動ですら聞こえてしまい何だが気恥ずかしい
少し身体を離そうとヒューバートが腕の力を緩めた時、生まれた隙間によりアスベルと目が合い逆にもっと恥ずかしくなった
「・・ヒューバート」
「・・・何です?」
「来年絶対合格しろよな・・俺も合格するから・・そしたら一緒に、」
「兄さん・・・まさか兄さんの目指してる大学って・・」
アスベルは何も言わないで微笑んだ
アスベルが目指している大学とはヒューバートが高校になる前から夢見てた所で今正に目指している大学だ
「全く・・貴方って人は」
自分の為にこんなにも頑張ってくれている事が嬉しくて、顔が緩んでしまいそうなのをバレない様、腕に再び力を込めた
「ヒューバート好きだ」
寂しさなんて吹き飛どばす様な言葉に胸がいっぱいになり愛しさが溢れ普段の自分なら絶対言わないであろう言葉を出したのはまた後の話―・・・。
end
(120319)
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学パロ
また終わり方が・・
素直なヒューバートもツンツンしてるヒューバート大好きです。
読んで頂きありがとうございました!
終わり
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