あの空の下でもう1度。 26





―痛い

       怖い


           暗い


    暑い




         苦しい






       消えたい








      誰か助けて・・・







「あーわっりー眼鏡踏んじまったわぁ」

「迷惑だから机直しとけよ」


「お前の存在自体迷惑だけどな」



笑い声と共に消えていく憎い奴等

そんな奴等に何も言えない自分も憎い



誰も助けてくれない




視界に入るのは当たった衝撃で無様に倒れた机や椅子に皆の冷たい視線


痛む身体を無理矢理起こして机を元に戻す

机の倒れ方や身体の痛みからして凄い力で投げ飛ばされ凄い勢いで当たった事が解る



吹き飛んだ眼鏡を拾い上げるとヒビが入っていてもう使えそうに無かった





「お母さん・・眼鏡壊しちゃった」


「あらあら、新しいの買わないとね・・でもお母さん仕事忙しいから暫く我慢してもらっても良い?」


「うん」


「ごめんね」


謝るのは僕の方なのに・・


「明兎腕どうしたの?」

「え?」


腕を見ると痣が出来ていた

珍しく今日は半袖を着ようと思ったのが間違いだった


「ちょっと転んじゃって・・その時に眼鏡も壊れちゃった」


心配掛けたくない

実はいじめられてる何て言えない



次の日学校に行くと机の中に入れておいた教科書が無くなっていた

何処に・・・


「教科書なら体育館倉庫横のゴミ箱に捨ててやったけど?」


急いでその場所に向かった

大きなゴミ箱の中身を必死で探すが中々見つからない

すると突然後ろから誰かに押されゴミ箱は衝撃で倒れ頭からゴミを被った


「はは、ゴミかと思った」

「んなとこにあるわけねぇじゃんバーカ」

「正解はこっちでした」


腕を捕まれ強引に体育館倉庫へ連れてかれる

中へ投げ入れられ、扉が閉まると朝なのに真っ暗で眼鏡が無い所為もあってか相手の位置が全く確認出来ない


「・・・っ!」


真っ暗な辺りを見渡しているとこちらに何かが投げつけられた

触った感じで教科書だと判断

良かったと思ったのも束の間、次に投げられた物で再び痛さを感じる

それは音でボールだと解った


痛さから苦痛な声が勝手に漏れ、それを聞いて面白がっているのか徐々にエスカレートしていく


「!」


背中に当たった何かで意識を半分失い掛ける



それは何か解らないけれど凄く固くて金属の様な音がした


次は何が来るのか怯えて居ると足音が近付いてきた

怖くて身体が強張る


「ぃた・・っ」


頬に何か冷たい物が当り横へ動くのと同時に切れた様な感触

3人のうちひとりが懐中電灯で照らしそれが何か解り息を呑んだ

刃物だ


先程背中に当たった物は何かと思い顔を動かさない様に目だけを動かし確認

目に入ったのは高跳び用のポール

だからあんなに・・

「っ・・!」


顔に刃物が食い込み痛さで顔が歪む


「やっぱお前サイッコー・・その顔ゾクゾクする」

「田中は相変わらずドSだなぁ」

「―!」


いきなり視界が変わったかと思えば俯せに組み敷かれ先程ポールで叩かれた背中を露に


「うっわ、凄い痣・・一生残っちゃうんじゃない?」

わざとらしい言い方に腹が立つ


振りほどきたいのに背中が痛くて力が入らない

瞳に溜まった涙を落とさない様に必死で堪える


「・・泣きたいんなら泣けば?」


耳元で言われて全身に鳥肌が立った

田中は今絶対に面白い物でも見ている様な顔をしているのだろう



「暫くそこに居ろ」



―・・・え?



離れて行く後ろ姿


閉じ込められる

起き上がろうとしても痛さで力が入らなくて起き上がれない


バタンと重い扉がしまった後鍵が掛かる音



嫌だ


暗くて怖い


暑くて痛くて苦しい



呼吸が荒れる


どうしよう・・喘息の薬は鞄の中だ


どうしたら

呼吸が出来ない

意識が遠退いていく・・・






--------・・・




「ゴホ・・っ・・・、」


夢―?


「体調大丈夫?」


前の学校に居たときの・・・

思い出しただけで苦しい


「過呼吸?」

確か初めて過呼吸になったのはあの時だ・・

「吐きそうだったらこれに吐いて良いよ」

東が背中を擦ってくれたお陰で呼吸が治まり嘔吐した

「はぁ・・・っ・・」


背中見られたこと無いよね・・?

「何かあった?」

聞かないで

「・・嫌な夢見た」

「どんなの?」


言いたくない



「・・・あんまり覚えてないや・・」

「そっか・・それ捨てとくよ」


もうあんな目に合いたくない

大丈夫だよね


大丈夫


もう・・・―いや



田中が居る



恐怖が蘇り布団の中に潜り込んだ




東はもう守ってくれない?




「そういえば熱は?」

不意に覆っていた布団を避けられた

「ど・・したのっ?」


あぁ・・涙がまた

泣き虫な自分が嫌だ



「どっか痛い?また吐きそう?」

「怖く、て・・・ッ」

「怖い?夢が?」


夢じゃないよ


僕は・・・



「東・・嫌い」

「え?」

「僕、の事・・っ嫌い?」



僕は嫌われるのが怖いんだ



「嫌いなわけないじゃん」

「本当?嫌い、になら・・ないで・・っ」

「うん・・ならないよ」


嫌われる覚悟はしてたけどやっぱり嫌

大好きなんだよ東が・・・



「大丈夫だから安心して眠りなよ」


優しく撫でてくれる手を信じても良い?


好きでいても良いの?





もう嫌いになれないよ。



26 完


(120327)



戻る


 
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -