あの空の下でもう1度。 25



食事を終えて部屋に戻ると藤が寝息を立てて寝ていた


ベッドに方膝を乗せ身を乗りだし顔を覗き込む



―威瑠いるけど良いよね・・



顔をそっと近づけて唇にキスした


「・・秘密ね」

「ん」


威瑠の方を向いて言うと短く返事をした

威瑠の事だから何か言ってくると思ったんだけど・・

昨日から様子が変だ


「威瑠どうかした?」


「・・・東は見てなかったんだね」

「え・・?」

「何でもない」


―見てなかったって何を・・?




「ゴホ・・っ・・・、」


咳きが聞こえて振り返ると藤が起きた様だった


「体調大丈夫?」


藤は咳き込みながらダルそうに身体を起こした

何か・・・


「過呼吸?」


苦しそうに胸元を押さえていたからそんな気がして背中を擦ってやる

確かこの前過呼吸になった時は嘔吐してたっけ

そう思い乗り物酔いした時のために持ってきていた紙袋に黒い袋を入れた物を鞄から取り出す


「吐きそうだったらこれに吐いて良いよ」


袋を渡し再び背中を擦ってやると少しずつ呼吸が治まり、ある程度落ち着くと思った通り嘔吐した


「はぁ・・・っ・・」


口元をティッシュで拭いてやりながら問いかける


「何かあった?」

藤は一度息が詰まった様に唾液を呑み込むと深く息を吐いた


「・・嫌な夢見た」

「どんなの?」


藤は一度こちらを見ると直ぐに目を反らし袋の口を縛りながら答えた


「・・・あんまり覚えてないや・・」

「そっか・・それ捨てとくよ」


袋を藤の手から取りゴミ箱へ


―覚えてるくせに・・・

ほんと嘘下手なんだから



言えない様な夢でも見たのかな


藤の方を見ると再び布団の中に潜り込んでいた

怪しい・・・



「そういえば熱は?」


頭まで覆っている布団を避けた時、目に入った泣き顔に驚いた


「ど・・したのっ?」


どうしたら良いのか解らず威瑠にも声を掛けようと振り返ったが威瑠は居なかった


「どっか痛い?また吐きそう?」

あたふたしながら背中を擦ると藤はしゃくり上げながら首を横に振った


「怖く、て・・・ッ」

「怖い?夢が?」


藤は高熱を出すと幻聴幻覚、怖い夢を見たりする人なのかもしれない


「東・・嫌い」

「え?」



「僕、の事・・っ嫌い?」


あぁ・・吃驚した・・・

俺の事を嫌いなのかと思った

良かった・・・


「嫌いなわけないじゃん」

「本当?嫌い、になら・・ないで・・っ」

「うん・・ならないよ」


嫌いになってって言ってたくせに

どっちにしろ嫌いになんてならないけど


「大丈夫だから安心して眠りなよ」


布団を掛け直して頭を優しく撫でてやると落ち着いた様で目をそっと閉じた


「・・・」


「東ーそろそろ集合時間だよ」

扉が開くのと略同時に飛び込んだ声

「威瑠何処行ってたの?」


「ちょっと外出てた」

「ふーん・・・」


威瑠はやっぱり元気無いし・・・



もう意味解んない



「威瑠ほんと何かあったの?」


廊下を歩く足が停まって威瑠は俯きとても複雑そうな顔をしていた


「・・このままは駄目だと思うから言う」


威瑠のこんなに苦しそうな声初めて聞いた・・


「俺・・・藤原とキスしちゃったんだよね」


「・・・え?」



思いもよら無い言葉に反応が遅れ驚いたのと信じられない気持ちでいっぱいだった


「ごめん・・ほんと・・・俺の事、殴っても良いよ」

この様子、嘘じゃなさそう

「・・えっと・・・威瑠は藤の事が好きなの?」

「いや・・・」

「じゃあ何で・・」


「・・・解らない」


何で何でって疑問が頭の中で渦巻く

それと一緒に嫉妬の様なもやもやと複雑な気持ちが混ざり合いどうしたら良いか解らず手で拳を作った




―威瑠じゃなかったら思いっきりぶん殴るのに・・・




「本当にごめん・・ごめんな・・・」

「も、いいから・・・今度3人で話そう・・」


その場から逃げるように集合場所へ走って向かった


ほんと何で



どうして藤は何にも言ってくれなかったの?



もう訳解んない・・・

全て嘘だったら良いのに。



25 完


(120327)



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