「んっ・・・」
目を覚ますと天井が目に入った
いつの間・・・
「目覚めた?」
びっくりして声のした方を向くと東が座っていた
ガバッと起き上がるとここが保健室だと言うことが解った
「まだ寝てなよ・・・先生が言ってたよ、睡眠不足と食欲不足だって」
「・・」
「俺の所為?」
何だが東はとても辛そうな顔をしている様に見えた
「違う・・・」
「じゃあそれは違うとしよう、でもストレスは俺の所為だよ」
「・・東教室戻らないで良いの?」
「話し反らさないで、それに保険の先生に先生が戻るまで見ててって言われてる」
そんな事言ったってストレスも東が原因じゃない
「ねぇ・・藤聞いて」
そう言うと手をぎゅっと握られる
「ほんとに傷が増えたって変わらないと思ってる?」
「それは・・・」
「俺はやだよ、藤に傷が増えるの・・たったひとつでもそれが一生残るんだよ?たくさんあるもののひとつならそんなに重くないかもしれない、けれど藤の身体はひとつしか無いんだよ?同じひとつでもどれ程重いか・・・考えた事ある?」
手を握ってくれている東の手が暖かい
おかしいよ・・涙が止まらない
気が付けば僕は東に抱き締められていた
優しく頭を撫でてくれる手が、握ってくれている手が今まで我慢していた僕の感情を崩した
「ねぇ、僕・・・っこれから・・ど、したらい・・?」
東は話を聞きながらずっと頭を撫でてくれていた
「親に、ばれて・・会うの気まずく、てッ・・ご飯も食べられなくて・・・僕、はっ・・・お母さんに幸せになって・・もらいたい、のに・・今嫌なっ思いさせてばっかだ・・・っ」
「・・藤、大丈夫だよ・・・1度思い切って話してみなよ・・もしダメだとしても俺がずっと明兎の側にいる」
「っ僕の、こと・・嫌いじゃない?」
顔を上げると涙を拭き取ってくれた
そして微笑んで言ってくれた
「大好きだよ」
その言葉に先程より増して涙が流れてきた
「ごめんっ、東・・僕の、事好きで・・っいてくれて、ありが、と・・・それから、嫌いにならないで・・ねっ」
「俺もごめんね・・嫌いにならないよ絶対に」
僕はたくさん泣いた
その間東はずっと抱き締めてくれていた
先生が戻ってきても隠れる様に温もりに包まれていた
お陰で重かった心が軽くなり、それと一緒に勇気も湧いてきた―・・・
--------・・・
「・・っただいま・・・!」
キッチンで夕飯の準備をしているお母さんに向かって一言「ただいま」と言った
すると花の咲くような笑顔で微笑んでくれた
「お帰り、明兎」
「今日は僕もご飯食べる、ね・・・食べても良いかな?」
「もちろん!」
東ありがとう
今お母さんは幸せそうに笑ってくれている
今まで部屋に閉じ籠って「ご飯は?」と聞かれても「いらない」と言ってた僕
その時のお母さんの顔は見えてないからわからなかったけど声がとても悲しそうだった
僕が元気で居るだけでお母さんがこんなに喜んでくれるなんて知らなかった
そしてお母さんが嬉しそうなだけで僕も嬉しい
東のお陰だ。
15 完
(120305)
戻る