あの空の下でもう1度。 10



「明日は学校来るよね?」

「・・うん」


今日見舞いに来てくれたふたりを玄関まで見送る


佐々木くんは既に玄関を出ていて外で東を待っている

言わば今東とふたりきり


「じゃあね、藤」


「あ・・・、」


言葉が出なかった

その代わりに東の裾をぎゅっと掴む


「藤・・・?」


「・・・」


少しの間そうしてると外から佐々木くんが「まだぁ?」と呼ぶ声にびっくりして裾を離した



「あ・・・えっ、と」


東は玄関を開けて外に居る佐々木くんに声を掛けた



「威瑠先帰ってて」


「えー俺方向音痴なんだけどー迷子になるよー」

「嘘吐け、真っ直ぐの道をどうやって迷子になるの」


どうやら方向音痴なのは本当だけど迷子になる程では無いらしい


「じゃあね〜」


笑いながら帰っていった佐々木くんを東も笑いながら見送り扉を閉めた




「・・どうかした?」


「・・・・・」


何も言わないで東に抱きついた

厳密に言えば何も言えなかった



「・・大丈夫だよ」



何が

なんて聞かないでも解るけど東は言葉を足した


「威瑠は気にしてないと思うよ」


「そんなの、わかんないじゃん・・・学校行きたくない・・っ」


「駄目・・俺が無理矢理連れてく」



東の服をぎゅっと掴むと東は強く抱き締めてくれた



「大丈夫だから・・次は絶対守る・・・約束する」


涙が出そうになった

だけどここで泣いたら駄目だ



そう思っていると東が僕の手を取り、手首の痕に唇を添えた



「昨日は守れなくてごめん」



顔を上げると苦しそうな顔の東と目が合った








―こんな思いさせてたんだ








--------・・・


東が帰った後部屋でひとり考えていた


これからどうしようか




そんなことを思いながらふと机の上を見る

ペン立ての中に紛れて刺さっているカッター


それを手に取った




「・・・ッ、」




ドクドクと心臓が鳴り響く


気が付けば手に持っているカッターで手首を突き刺していた


血が流れ出る


それと一緒にどこか解放されたような気持ちになった


その快感を知ると止められなくなった

何度も何度もその痕に沿ってカッターを動かす



流れている血をただただ見ていた







--コンコン








突然部屋の扉を叩く音が聞こえた

驚いてカッターを奥まで刺してしまう



「っ―・・・!」



ドアノブが動いたのを見て慌てて痛む手を押さえつけカッターと一緒に机の下に隠した




「明兎ー?」


「何・・お母さん、」



どうやら今日は帰りが早かったらしい


「明日病院だけど学校どうする?遅れて行く?」

「病院?何で?」


「何でって、喘息の薬そろそろ切れるでしょ?」


そう言えばと思い出した時お母さんが続けて言葉を出した


「勉強してたの?」


机の前に座っているのを疑問に思った見たいだが今机の上に勉強道具が乗っていない


「・・今からしようと思って」

「あんまり無理しちゃ駄目よ・・・いくら将来の為だからって」



「・・うん」



僕には夢があった

東には嘘を吐いたが行きたい大学も決まっている

まだ言えないでいるのは恐いから



いつかこの関係に終わりが来てしまう事が恐かった




「それじゃ、お母さん出かけて来るから」


「うん」



パタンと扉が締まりほっと息を吐く



痛む腕を見ると血がだらだらと流れていて、手を真っ赤に染めていた



「何やってんだか・・」



冷静を取り戻すと自分がした事に嫌気がさして仕方なかった。



10 完


(120301)



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