あの空の下でもう1度。 33



「東・・・」


「暫くこうさせて・・」


「うん」

「ごめんね藤」


自分の心臓の音が煩い

きっと藤に聞こえてる



「・・こうすると藤が余計に小さく感じるよ・・・俺の腕をすり抜けてどこかに行っちゃいそう」

「どこにも行かないよ・・東が僕を好きでいてくれるなら」


「ずっと好きでいるよ」


「永遠なんて無いんだよ・・?」

「でもずっと好きでいる」


心臓の音と時計の音が微かにずれて鳴り響く


「藤は・・昔の俺の方が好き・・・?」

「・・今の方が好き」


「あの言葉はどういう意味だったの・・?」


「ただ自分の心を誤魔化してただけだよ・・・確かに最初は別人に思えたけどやっぱり東は東だよ」


「良かった」



目をそっと閉じて藤の温もりを感じていた時

家のドアが開く音が聞こえてどちらともなく慌てて離れた


「母さん帰ってきたかも」


確かめに部屋を出る直前にちらっと藤を見ると起き上がって荒れた服を直していた






-----・・・



母さんに「明兎」が来てると知らせたら物凄くテンションが上がって「会いたい」と言っていた

藤は今の状態では会いたくないだろうしあの荒れたベッド見せられないため「また今度」などと言って諦めさせるのに結構時間がかかってしまった


俺が部屋に戻る時、もっと早く知らせてくれれば良かったのにと文句を言っていた



「藤、遅くなってごめんね」


扉を開けながら言うと先程起き上がっていた筈の藤がベッドに寝転がっている姿が視界に入った



「寝てる・・・?」


近くに来て確認するとスースーと寝息をたてていた


「藤ー・・・」


揺すっても起きるどころか動きすらしない



「・・・無防備過ぎるよ」


目を細めて藤を見ると白い肌が襟から覗く


ボタンをふたつほど外して首元を撫でる


首筋に唇をそっと近づけて痕を付けた


「ん・・・っ」


起きるかと思い慌てて離れるが起きる様子は無かった


次は唇に軽くキスをしてボタンを閉めた


「あんまり安心し過ぎて寝ないでよ・・俺は藤が好きなんだから・・・襲っちゃうよ」


そんなこと言っても爆睡している相手に聞こえる筈無く独り言となって消えていった。



33 完


(120115)



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