あの空の下でもう1度。 29



学校に来て教室の前に立つと藤の声が聞こえた


スラスラと間違える事なく読む藤の声に聞き入ってしまうのと同時に朝の自分の行為を思い出してしまう


深呼吸をして気を引き締める為に頬を軽く叩いて戸を開けた




-----・・・



何度忘れようとしても朝の行為を思い出す


藤を見ると余計に


目を反らされた時は俺がした事に気が付かれたのかと思った


だからだろうか


せっかく藤から話かけてきてくれたのに「用事が」とか言って避けてしまったのは




「・・こんなんじゃ駄目だろ」


独り言を呟き方向を教室へと戻す


早足で来ると教室の前でばったり藤と出くわした


「あ・・どこ行くの?」


「・・・トイレ」


「そっか・・・終わったらちょっと良い?」

「もう休み時間終わるから昼休みじゃ駄目?」

時計を見ると10分休みが後3分しか残って無かった


「ほんとだ、ごめんね引き止めて」


「うん」



トイレへ向かう藤の背中を見送る


藤はちゃんと休み時間が終わる前に戻ってきて4時間目に間に合っていた



授業の内容が全然頭に入って来ない


何から話そうか

どの順番で言おうかなどということばかりが頭の中でぐるぐると回る





チャイムが鳴ると緊張が最高潮に達した



「屋上で話そうか」

「・・ん」


藤が元気無さそうに見えて心がズキッと痛む


きっと俺の所為だ




「今日はお昼食べるんだね」


なるべくいつもの自分を装って話しかける


「体重落ちちゃったから」


藤は珍しくお昼を持ってきていた

といってもパン1個と飲み物だけだけど



滅多に人が来ない静かな屋上

俺はまだ言葉の整理が付いていなかった



「・・東、何か用あったんじゃないの?」


沈黙に耐えきれなくなったのか藤が口を開いた


言葉がまとまらないからと言って、このまま黙ってるのは相手に悪いと思った

上手く伝わらなくてもいい

もうどうにでもなってしまえ。



29 完


(120113)



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