「アルバム・・?」
自分の部屋を片付けている時
昔のアルバムを見つけた
「うわぁ・・・懐かしい」
懐かしいはずなのにあまり記憶に残っていなかった
「これ小1の・・かな」
何だか小2以前の事をあまり覚えていない
というより全く覚えてない
覚えてるのは引っ越してしまった子のことだけ
「この子だっけ」
一緒に写ってる写真を1枚取り出す
そしてそれを持って母さんがいる1階に降りていった
「あのさ、俺小2以前の記憶無いんだけど」
いきなりの言葉に母さんは驚いた様な顔をした
だけど少ししてから普通の顔に戻った
「そうね・・・もう高3になるから言っておかないとね」
母さんは読んでいた雑誌を閉じて俺に隣に来るように言った
「由宇はね・・1度記憶喪失になってるの」
「え・・・?」
「記憶喪失って言っても軽いもので家族やクラスの人の名前、物の名前はちゃんと覚えてるの」
そこまで言うと母さんは1度深呼吸をした
「でもね、昔の記憶が無くて・・・もうずっと会ってなかった人や大切な記憶が残って無いの・・・だから由宇には小2以前の記憶が無いの」
「そっ、か・・・」
何だか信じられなかった
今まで普通に生きてきたのに1度記憶を失っていたなんて
「あのさ、この子の名前覚えてない?」
そう言って先程の写真を見せる
「あら、あきとくんじゃないの・・今どうしてるのかしらね」
「・・・」
やっぱり
あの子は明兎だったんだ
そして明兎はあの子だったんだ
明兎と遊んだのはきっと小1の時なのに
何で覚えているんだろう
それほど・・・
それほど俺にとって大切な思い出だったのかもしれない。
08 完
(120106)
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