噂
北海道某所にあるファミリーレストラン。
その名もワグナリア。
12歳以上は年増だと豪語する小さいもの好きの男、男性恐怖症で近くに寄られると条件反射で殴ってしまう女、高校生なのに小学生に間違われるくらい低い身長の女、常に帯刀し店長への愛を捧げ続ける女、第一印象は怖いが実はとてもいい人な男、どこからともなく情報を仕入れてくるいろんな意味で物知りな男、さらに、仕事を一切しない店長、妻を探して回るマネージャー。
この一癖も二癖もあるファミレスに今日、新たに異色な人間が入ってこようとしていた。
「ねぇねぇかたなし君!」
「なんですか?先輩」
かたなしと呼ばれた高校生は、皿を拭いたまま振り返ってみると、自分より頭2つ分ほど小さい一つ上の先輩、種島ぽぷらが嬉しそうにこちらを見上げていることに気付いた。
「今日からね、キッチンに新しい人が入るんだって!」
「新しい人ですかー…」
いい加減まともな人入んないかな、と案ずるかたな…正しくは小鳥遊。ぽぷらはそんな苦労人をよそに友達になれるかなとわくわくしているようだ。
と、そこに青髪の青年が入ってきた。
「キッチンに新しい人入るの?俺それ初耳だなぁ……」
「あれ、相馬さんでも知らなかったんですか……?」
「うん、新しい人が入るだなんて今初めて知ったよ」
この青年、相馬博臣でも知らないとなると余程極秘なことなんだろうかと、あらぬ妄想をとばしながら皿を拭く小鳥遊。
「まあでもこの店で働くということはきっとまともなやつじゃないんだろ」
続いてキッチンから顔を出したのは金髪の佐藤潤。この男、顔面の左半分は前髪で覆われているという第一印象では間違いなく恐いと思われそうな髪型である。
だが実際はすげーいい人。
「それにしても、俺としたことがなぁー」
「そうですよね、やっぱり相馬さんでも知らなかっただなんて珍しいですね……」
「あ、そうそう」
ぽぷらは何かを思い出したように声を上げる。
「杏子さんが言ってたんだけどね、相馬さんと同じくらいの人なんだって!」
どの面でだ……!?
と心配する一同であった。
20100531
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