絶賛発熱中 
「はぁー……」

「どうしたんだ、佐藤?珍しく溜め息なんかついちゃって」



それもこれもお前のせいだ。

出勤し厨房に入ってきた一喜を見るなり佐藤は深い溜め息をついた。彼があからさまに悩みを抱えていそうな雰囲気を醸し出しているのも珍しい。


昨日、一喜が早い時間に上がり佐藤と相馬でキッチンを回していた。その折、相馬がまた妙なことを吹き込んできたのだ。





「千葉さんがね、最近佐藤君が気になってるみたいだよ」

「あ?千葉が?」



なんか気にかけられるような言動とったか?

と佐藤は手元のチャーハンをたまじゃくしでかき回しながら、ここ何日かの一喜との出来事を思い返す。……特にこれと言って思い当たることはない。



「違う、違うよ佐藤君。気になってるっていうのは好意を持ってるって意味だよ」

「………一喜が?」

「そう。千葉さんが。って佐藤君、チャーハン」





「……オイ、佐藤。大丈夫か?」

「!」



あまりにもボーッとしている佐藤の顔を、見かねた一喜がのぞき込む。

佐藤は驚いた顔のまま一喜を見ている。そんな彼を一喜は疑念を浮かべた表情でじっと見ている。

完全にどうすればいいのかと固まっていた佐藤の額に、一喜は不意に手を伸ばす。



「!!」

「…熱はないみたいだね」



ぴたり、と少しひんやりとするその手をあてがわれ佐藤の脳内はだんだんぐちゃぐちゃと洪水が起きはじめる。



しばらくして一喜が手を離すと、佐藤はすぐに自分の右手で目を覆った。

そして一喜に背を向けるようにフラフラと歩き出し、相馬が心なしか楽しそうな笑みを浮かべている横を通り過ぎ、厨房を出て行く瞬間立ち止まり、



「……今日は帰る」



とだけ言って出て行った。





絶賛発熱中






「相馬」

「ん?」

「……佐藤、あいつどうしたんだ?」

「さあ、君が熱でもうつしたんじゃないの?」

「……ここ5年くらいは風邪もひいてないぞ」

「……そう」





20100522

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