ストイックウィーク 
「2週間ね」

「…分かった」

俺は今、禁欲宣言をここにされた。

夏休み直前、すなわち前期末試験。俺は単位などに問題はないし、彼女も頭が悪いわけではないので、多少バイトが入っていようが遊ぼうが問題ない。

「メールも電話も。バイトで話しかけたりするのもだからね」

「えぇっ!休憩中とかもダメなの!?」

「そこからゆるむからダメ。第一、休憩中は私勉強するから」

普通の会話の中で言ってのけるが、付き合っている彼女に「テスト勉強に集中したいから話しかけるな」と言われてしまうのは、不安を感じざるを得ない。
しかし、彼女は真面目なのだ。最低でも単位があればいいという学生とは違う。

「一喜ちゃーん…」

「でもま、べらべら喋ってくる相馬が静かになるのはたしかにいいことだな」

「佐藤君、ひどいよ!」


そして2週間後

「はあ……」

「相馬、仕事しろ」

「そうだね…今日でちょうど2週間…でも明日にならないと一喜ちゃんシフト入ってないんだよ…。もう…げんか…い…」

完全に精気をなくした相馬はさらに絡みづらく、早く明日がくることを願う佐藤。
小鳥遊や種島はキッチンに流れる暗い空気を横目に佐藤に同情していた。

「相馬、今のお前は邪魔なだけだ。休憩行ってこい…」

「う、うん…」

ため息をひとつつくと、ふらふらと足元もおぼつかない様子で相馬はキッチンから姿を消した。


ああ、もうダメだ。一喜ちゃんと喋れないなんて俺死んじゃう。明日なんか待てない…。

「博臣!」

「!」

そこには俺の待ちこがれていた姿があった。

「一喜、一喜ちゃ」

がばっ、とその愛おしい呼び名を言い切る前に一喜ちゃんに抱きしめられた。初めて彼女からされた抱擁だった。

「よく…頑張ったね。ありがとう…」

「……」

そうだよな、彼女は別に俺が嫌いなわけでもない。むしろ、一度集中力が切れてしまえばだめになってしまうタイプだと自分で分かっているからトリガーは強固にしておかなければならいんだ。

「…博臣?」

「一喜ちゃん、大好き」

「な!何よいきなり…」

戸惑う彼女の腕からそっと抜け出し、頬に手を添えると、俺はその唇に優しくふれた。


(…俺、3分前から休憩なんですけど)
(小鳥遊君、二人のために我慢だよ!)
(休憩くらい下さいよお!)



20120801
すぐちゅーさせたくなる病気w

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