ビシッと指をつきつけて 
「ねぇ、かたなし君」

「何ですか、先輩?」



とある日のワグナリア。
ホール担当、種島ぽぷらと小鳥遊宗太は裏で皿を拭いたりなど、いつものように仕事をこなしていた。



「私ね、一喜ちゃんは佐藤さんのことが好きだと思うの」

「!な、何言ってるんですか!」



相変わらず変なところで鋭い、と心の隅で思う小鳥遊。それに対しぽぷらは探偵(?)のように顎に手をあて、フフンと鼻をならしている。



「あ、一喜ちゃん!」



そこに運悪く(?)一喜が入ってくる。


「ん?ぽぷら、どうした?」

「あのさ一喜ちゃん!」

「せ、先輩!!」

「一喜ちゃんって、佐藤さんのこと好きなんでしょ!?」

「………」

「………」



そこに、ぽぷらをはさんで向き合うような位置で出てきたのは、紛れもない佐藤潤その人だった。

さ、佐藤さん!?最悪だ!先輩、とんでもないタイミングで爆弾投げ入れましたよ!

小鳥遊が勢いよく2人の顔を見ていると2人とも放心状態で口が開いたままになっている。



「あ、あの、一喜ちゃん…?」

「先輩…」



そう言いながら小鳥遊は佐藤の方を目線で指す。
その意味を一瞬で理解したぽぷらはカタカタと振り返って佐藤の方を見る。



「!!」



その光景はもはやライオンとトラに挟まれ、絶体絶命になっている小動物だった。
それを思い浮かべた小鳥遊もさすがにこんな状況でニヤニヤすることも出来ず、いかにここからいかにぽぷらを救い出すかだけを考え、あたふたとしている。



「なあ、佐藤。私はお前に言いたいことがあるんだ」

「そ、そうか……なんだ」



俯いた一喜の顔からその意図は読むことが出来ない。佐藤は今聞いたばかりの情報に少なからず動揺し、ぽぷらは未だに抜け出ることが出来ず、あたふたしている。



「お前のことが好きだ!!」





ビシッと指をつきつけて







「…一喜、帰るぞ」

「!!」

「えぇ!?佐藤君!?千葉さん!?」





20100522

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