シャルナーク、彼は私には出来すぎた恋人であると思う。

仕事はIT関係をしているらしくパソコンに非常に詳しい。加えて驚くほどの知識量にいつも私は「そうなんだあ」や「すごい」と返すことしかできない。それになんと言っても顔が良い。本人は童顔なことを気にしているようだったが、ベビーフェイスとそれに付随した甘い笑顔は世の多くの女性を虜にするはずだ。

だからこそ、何故私が彼と付き合っているのかよく分からないのだ。

付き合い始めはいつか?と考えるがどうしても思い出せないし、彼にそれとなく付き合ったのはいつだっけ?と聞けばよいのだが「もしかして忘れたの…?」と恨めしそうな顔をされるため未だにはっきりした答えを聞けたことはない。

しかしそんなことはどうでもよくなるくらい彼は私に甘かった。仕事が終わらないと嘆けばこちらが悲しくなるぐらいの早さで仕上げてくれるし、家事、買い物、その他諸々私がやることなすこと全て彼の方が上手くやってみせるのである。
一時期それが原因で彼と距離を置いたこともあったのだが、毎日送られてくる優しい言葉だけが詰まったメールを見ていると、自分がダメ人間になったようで悔しかったなどという理由で冷たくしていることが酷く恥ずかしくなり、3日で元の関係に戻った。

そうやってずるずると、このままでいたら自分がダメになると分かっているのに彼と付き合って今に至る。もはや顔が良くてお金もある男と付き合えてラッキーと思えるレベルはとっくに過ぎて、自身がシャルがいないと何もできない人間になるか否かの瀬戸際にいるのだ。
最近では毎日のように別れを切り出そうとしているにも関わらず、彼はそれを見据えたように上手く会話を操って全く違う話に変えてしまうのだから適わない。

そして今も――

「今日は名前の好きなやつ作ったんだけど、食べるでしょ?」

「うん」

彼が作った食事はいつも私の好きなものばかり。味つけも私好みで、出される量もデザート、飲み物さえも完璧である。言い換えれば彼に体調管理の全てが委ねられていると言っても過言ではない。外出するなら彼が必ずついてくるし外食は基本的にさせてもらえない。それならば会社は?とっくの昔にやめさせられている。
毎日同じことの繰り返しで鬱鬱とした精神状態で食欲などないはずなのに、彼に促されるとすぐにフォークをとって体は動き始めるのだから私はもう自分の意思で動くことは適わないのかもしれない。

自分の思い通りに動く私を見て満足そうな彼を見ていて、私にも分かることが1つある。

きっと今日も別れ話はできない。







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