「君が噂の情報屋かあ」

ありえない音を立てて吹っ飛んだドアから入ってきたのは金髪の男だった。この惨状に似合わない貼りつけたような笑顔は好青年そのものだが、いかんせん行動と表情が一致していない。
こいつはやばい、と第六感が告げている。逃げ道を必死に探すが、この隠れ家自体見つかることは想定していなかったし通路は先ほど壊された入口のみ。私は完全に詰んでいた。
早く逃げなければ、と考える頭に反して圧倒的な力量差を感じ取ったことにより体は全く動かないし、逃げても捕まるだろうことは予想できた。男もそれを分かっているのだろう。ガチガチと震える私に目もくれず、そこらにちらばる書類を物色している。

「うーん、予想以上の情報量。これは当たりだね」

「あ、それ、」

彼が手にしているのはつい三日前に手に入れた”幻影旅団”に関する情報だった。情報屋を営む以上あらゆる情報がここに集まり、それに伴い情報を守ろうとした輩に攻撃を受けることもある。その中でようやく掴んだ彼らの情報は早いうちに狙われることは分かっていたが、こんなにも早く隠れ家を把握されるとは思わなかった。そもそも私の念能力は探索には優れるが戦闘にはめっきり向かないのだ。そのため護衛として何人か雇っているし、彼らもこんな優男風の男1人に全滅させられるような使い手ではなかったはずなのに。何故…

疑問をぐるぐると廻らせる頭がようやく冴えたのは、はっきりとした殺意を向けられた時だった。

「この情報って君が集めたの?それとも君はただの仲介人?」

彼が手にしている可愛らしいオブジェがついた針は何に使うのか分からないがとにかくあれが彼の能力なのだろう。あれに刺されなければ逃げられるのではないか?という楽観的な思考がふと頭をよぎるが入口を塞ぐようにして立った彼には一切の隙はない。
しかもこの二択の答え次第ではきっと私は即殺されてしまうのだろう。

ただの仲介人だと言ったら逃がしてもらえるのか?否

「わ、たしの能力です…」

ふり絞るようにした答えは彼にとって満足のいくものだったらしい。満面の笑顔を貼りつけた顔が距離30センチまで近づくと美しい緑の瞳がよく見えたが、その奥にこびりついたどろどろとした思念が見え隠れして思わず顔を逸らした。

「合格だね。それじゃ一緒に行こうか」

ぷすりと首に軽い痛みが走る。ああ、やっぱり私は答えを間違えてしまったのかもしれない。その場で殺された方がきっとよかったのに、ぼんやりと霞がかる思考は次第に白で塗りつぶされていった。







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