※原作設定です。注意。





結局意地っ張りでかっこつけでプライドの高いただの馬鹿野郎なのだ、おれの、兄という男は。

(格好つけて死にやがって、エースのばーか)

そんなふうに虚空に向かって悪態をつけるほどには時間が経ったし、この胸の傷も乾いて引き攣れた。

凛と立つその背中。
大地を踏み締める強い脚。
この不確かな存在をどこまでもおおらかに包む腕。
確かにそれら全てが自分の憧れで、指針で、そして

(あいしてた)

それでもどんなに無様でもらしくなくてもみっともなくても生きていて欲しかったと今になっても思うのは、所詮この世界の気まぐれの一つにすぎない愚かな自分のエゴなんだろうか。

新世界と呼ばれるこの海に佇む伝説の墓標がふたつ。

(ここまで来たぞ、エース。)

目指したのは、こんなところじゃなかったけれど。

要するにどうしようもなく馬鹿で阿呆で見栄っ張りなのだ、あの、エースという男は。
本当に、伝説に相応しい。これを馬鹿と称さずに何と言おう。ああ、本当に、

(涙が出るほどに笑えちまう)

土の下に眠る兄よ。
余りに多くに憎まれ愛された男よ。

あいしてくれた、あいした、ひとよ。

(そこからなにがみえる?)

みているか、おれのこの姿を。
お前の馬鹿さ加減に笑えて笑えて震えるこの手を。

みているか。
おれは此処に来た。

みているか
おれは此処にいる。
此処に、在る。

みていろよ
いつか必ず、お前が目指した高みへ。
そして、

(そしたら、そこへゆくよ)

待っていろ。
最高の冒険の物語を。
伝説を超えた伝説を。

それから、それから、

(恨み言の、ひとつでもきいてくれよ、な)

だから今はこうして、
今だけはどうかこうして、
笑いながら、泣かせてくれ。

(大概、おれも人のことはいえねえなあ)

だって、今でもこんなにも、


鹿


(馬鹿野郎は、どっちだ。)