※Caution!!R18
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あんまり久しぶりのことで、脳みそがフリーズしてしまっていた。
さっき借りたシャンプーのにおい。まだちょっと湿ってる髪が、頬っぺたにぎゅうぎゅう押し当てられる。広い肩。大きな手が、痛いくらいにおれの肩と二の腕を掴んで締め付ける。
ああ、抱きしめられるってこういうことだっけ、なんて。
「……――――――、…もう、なんなんだよ〜〜!」
「…!!ルフィ、」
「ッな、何なんだよ!!離せよバカ!!おれ、おれが、どんだけ覚悟決めて、バイバイ、しようって」
「ルフィ…!」
エースの体温に、必死で固めた堤防がずるずる溶けて崩れていく。
必死でそのあったかい場所から逃げようと暴れるのに、エースの腕はびくともしない。
ボンちゃんの手のひらにだって溶けなかった心の奥の氷が、エースの腕のあったかさに簡単にどんどん溶けて目から落ちる。悔しい。泣きたくなんかなかった。かっこよくサヨナラって言いたかった。どうせ最後なら笑っていたかった。もう最悪だ。
「離せ!!何で抱きしめたりすんだよ!!…ッ、ぅ、気、遣って、スキとか言うな!!」
「ルフィ、」
「もうわけわかんねえ!!なんなんだよ!!気持ち悪いなら気持ち悪いって言えよ!!嫌いなら嫌いって、別れたいならハッキリ、」
「―――馬鹿な事言うな!!」
初めて聞くエースの怒鳴り声に、思わず震えた。
「…――バカなこと、言うなよ!なんで、おれが、嫌いとか、別れるとか、…なんで…!!」
なんでおれがそんなこと、と言ったきり、エースは言葉を探して黙ってしまった。
それでも、言葉の代わりにぎゅうう、と身体を締め付ける腕の力が強くて、それが最後の何かを壊してしまった。
ぼろぼろ零れる涙を止める方法は、もうなかった。
「……もう、意味わかんね…!…っ、おれ、これ以上、どうしていいか、わかんねえ…!」
「…、」
「好きなら、なんで、触ってくんねえの?なんで、キスしてくんねえの!?」
「…! ルフィ…?」
「……ッ、こんなに、さわりたいって思ってんの、おれだけ?」
もう止まらない。全部全部勢いづいて流れて落ちる。
「…おれが、変なのかな…!…ぅ、エース、に、さわりたいって、さわってもらいたいって、そんなの、おかしいって、思う?」
「…っ、る」
「ちゅーしたいって、…〜〜っ、え、えっちしたいって、思ってんの、変、なのかな…!!」
「…!!」
「き、きもちわりィって、思う?…ぅ、こんな、こんなおれ、もう、嫌いに」
「――――ゴメン!!」
がば、とエースが頭を下げた。
ぺたりと床に座り込んだまま、おれは涙も鼻水もたれ流したまま、ぽかんと口を開けてそれを見ていた。
これはあれだ、時代劇とかでよく見る、そう、土下座というやつだ。
「…―――ごめん。不安にさせてゴメン。こんなに思いつめるまで我慢させてごめん。チキンで、草食系で、妄想ばっかりしててすみませんでした!!」
一気にぶちまけたエースの言葉を、おれは動かない頭の中でぐるぐる考えていた。
チキン?草食?妄想?食べもんの話か?
「――――もう、我慢しねェ」
そうして顔を上げたエースの眼は、見たこともない色をしていた。
******
「あ、あっ、んぅ、…っ!」
「ルフィ、…きもちい…?」
「…〜〜〜〜っ」
もう言葉なんか出ない!
飛びかかるように抱きしめて押し倒されたかと思ったら、何か言う前に激しいキスで訳もわからない状態にされて、あっという間にベッドの上に運ばれた。
慌ただしい手つきでエースがおれのシャツの襟を開いて、首筋に顔を埋める。ぬる、と肌の上を何かが滑った瞬間、おれは全身にびりびりと電流が走るのを感じた。
エースが!あのエースが!手も繋いでくれなかったエースがおれを押し倒して抱きしめておれの首舐めてる!!
その事実が電流に変わって全身を駆け抜けた。エースの舌が肌の上を滑るたび、びくびく身体が震えるのを止められない。胸がやぶけて心臓が飛び出しそうだ。嬉しい。うれしい。泣きたいくらい。その間にもぷちぷちとひとつひとつシャツのボタンが外されていく。
大好きな人にからだ舐めてもらうだけで、こんなに気持ちいいなんて。やばい、おれ心臓爆発して死んじゃうかも。そんなこと考えて頭パンクしそうになってるとこで、突然エースが乳首を吸った。
それがもう大変なことになった。
「あ、えーす、っ、エース!」
「ルフィ、乳首気持ちいい?指と口と、どっちがいい?」
「…っ、ん、そ、なの、言えね…ぅう、っん!」
「じゃあ、両方」
「んぁあ!」
ぢうう、と音を立てて思いっきり右の乳首を吸われる。それを慰めるみたいにちゅる、と乳首にエースの舌が絡んで、舐める。逆の方はさっきまでエースが散々にいじっていたからもうぬるぬるで、それをつまんだり押し潰したりされたと思えば、もどかしいくらい優しく表面の薄いとこを指の腹で撫でられたり。
堪らなかった。
乳首でこんな泣くくらい感じるなんて、おれおかしい。てかエースがおかしい!
「…ルフィ、舐めるのと吸うのと噛むの、どれが好き?」
「…ッ、…き、くなあ!やっ!」
「おれわかんないから。教えてルフィ。ルフィの気持ちいいこと全部してあげたいから」
「…〜〜〜〜ッ」
そんな風に、真剣にやさしく言うなんてずるい。おれのこと大事にしてくれてるんだなんて、そんな甘ったるいこと考えてしまう。ずるい。ずるい。大好きだ。
「…―――っ、ぜんぶ、すき!きもち、いい…!」
そんな恥ずかしいことエースの顔見てなんて言えなくて、おれは思いっきり目をつぶったままやっとの思いでそう言った。
もう上がりきらないはずの体温がまた一段階上がった。顔真っ赤だ。絶対。
「…ん、わかった。」
よかった、なんて嬉しそうに笑ったエースにふにゃ、と骨を抜かれたのもつかの間。
またしつこく乳首に絡みついた舌と指、ついでに股間のモノをやさしく握りこんだ大きな手に、おれはまた身体を震わせて悲鳴を上げる羽目になった。
******
(―――かわいい、ルフィ。泣いてる顔もかわいい。)
我ながら考えてることが最低だ。それでももう止まらない。泣きながらもうやめて、と訴える喘ぎ声だって興奮剤にしかならない。咥えたルフィのかわいいそれに、容赦なく舌を絡めむき出しになった先端を擦りあげる。後ろに突っ込んだ指ももう3本を数え、抵抗なくずぼずぼと抜き挿しを繰り返している。かれこれもう数十分ほどこのままだから、ルフィの喘ぎ声が尋常じゃないのも無理はない。
男はオオカミなのよ、なんて誰が言ったのか。まったくもっておっしゃるとおり。おれは今、獰猛な肉食獣です。
「…っやだぁ、もうやめ、…っあ、っあ、…〜〜〜!!」
どく、と口の中に独特のにおいが広がる。粘りととろみをもったそれをためらわず受け止め、吐き出したばかりのルフィのそれに絡めるようにとろとろと口から直接零す。
まるで菓子か何かのようにおいしそうに濡れたそれが、荒いルフィの呼吸に合わせてふるふると揺れる。
ずるりと指を引き抜くと、しどけなく開かれた脚を、やわらかい太ももに手をかけてやさしく押し上げた。
ゆっくりゆっくり、もどかしいスピードで竿から袋へ、狭間を伝い後ろの穴へ滴り落ちてゆく精液をじっくり観察し、思わず根元から舐め上げる。
小さく悲鳴を上げ、びくん、と敏感に反応したルフィにまた心臓をぶち抜かれながら、袋とアナルの間の薄い皮膚をぐりぐり揉む。ついでに竿も擦りあげてやると、身を捩ってルフィがよがるから、もっと気持ちよくしてあげたくて、太ももを抱え込んで同じところを舌で舐め、押し上げる。
男同士の行為を勉強しておいた甲斐があった。完全にルフィに施すことを妄想するためのいわばオカズだったんだが、まさかこんなに効果があるとは。
またゆるりとルフィのモノが立ち上がったところで、おれは顔を上げてルフィを見た。ルフィは上半身だけ捩って横を向き、目を閉じて甘い吐息を零しながら感じ入っていた。両手で胸を抱くようにして押さえている。
「…ルフィ、ルフィ、だいじょうぶか」
「…っ、…っ、はあ、ぁ、ん、」
こくこく、と小さく頷いたルフィは、それでもふるふると震えたまま目を開けてくれない。胸も押さえたままだ。おれがいじり過ぎたせいで傷を付けてしまっただろうか。
「ルフィ、どうした…?胸痛いか、」
「っや、だめ、っん」
「…?」
胸を抑える手を外そうとしたところ、弱弱しく拒否された。きゅう、とさらに小さく縮こまってしまったルフィが心配で、上から覆いかぶさって顔を覗き込む。
「…ルフィ、ごめん、おれ痛くしたか」
「……ちが、ちがう、…はぁ、――ずっと、触られてた、から、」
「…?」
吐息の様な、淡いルフィの声を聞き逃さないように、さらに顔を近付ける。
「…むね、ずっと、い、いじってくれてたのに、…ん、なんかスースーして、やだった、から」
だから、自分で触ってた?乳首を?おれにフェラされて、うしろに指突っ込まれてる間、可愛い声で鳴きながら、ずっと?
―――やべえ!!
「!? わっあっ」
「ごめんなルフィ。全部触ってやるから」
「―――!?」
くたりと力の抜けたルフィの身体を、うつ伏せにころりと転がす。サッチがふざけて鞄に潜り込ませたゴムが、奇跡的にほんの数個だけ部屋にあったのを、さっき枕元に転がしておいた。それをもどかしく開け、ちゃっちゃか装着する。
有無を言わさず細い腰を抱えこんで持ち上げて、痛いくらいに張り詰めて盛大にエレクトしてしまっているそれを宛がう。
きれいなやわらかい尻。その狭間でぐずぐずにとろけているそこ。
あの絶対に侵してはいけない聖域を、おれは今、
「……は、やく」
「…!」
シーツにくたりと身を預けたまま、ルフィがおれを振り返って見上げていた。ルフィがみじろいだ瞬間、ふれあったそこがくちゅりと小さく音を立てる。
悩ましげに眉を寄せたルフィが、涙目でおれを見上げて言う。
「えー、すの、はやく、入れて…!」
ずぶぶ、と思いっきり突き入れた瞬間、背筋を強張らせ、シーツを乱して悲鳴を上げたルフィ。ただ、その声に痛みだけではない歓喜の声も聞いたような気がした。
なにより、ずるりと入り込んだルフィの中の感触に、突っ込んだソレが溶けそうで、申し訳ないけどその瞬間だけはルフィに配慮する余裕がなかった。いや溶けたら大惨事だけど、それくらい起きてもおかしくないくらいの、壮絶な快感だった。
「…っあ、っあ、っあ…!」
「う、…ッ、ルフィ…!」
ぐ、ぐ、と根元まで容赦なく押し込んで、はあ、と一息吐き出した。
そのままルフィの背中に覆いかぶさり、白い素肌を掻き抱いた。後ろからすんなりと筋肉のついた身体を抱え込んで、寂しかったと訴えた乳首と、前をやさしく握りこんで揉む。
「――エース!っあっぅ」
「ルフィ、…動いて、いいか?」
「っん、っん、はやく、っはやく…!―――ッアぁ!!」
ガツガツと獣の本能で喰らいつく。
乳首を探り、前を扱き、やわらかい尻に叩きつけるようにして中を抉る。ギシギシと激しく軋むベッドの音と、惜しみなく溢れ出るルフィの嬌声。シーツにしがみついて、身悶えて快感に耐えるルフィの顔を後ろから覗き込む。ぽろぽろと零れる涙と、乱れた髪から滲んで滴る汗を、舌を這わせて拭い取る。
あり得ない。おれは一生分の幸せを、今使い果たしているんじゃなかろうか。
「…―――エース、ッ!エー、っあん!えー、す!!」
「…ルフィ、なに、ルフィ」
「っん、…エース、ッおれ、ぁ、おれ、ずっと、ずっと、こうしてほしかっ、た、…ッん!」
「――、」
「エース、の、一番、近くに、ッ!…エースの、ぜんぶ、ほしかった…!!」
「……!!」
「おれの、全部、エースに、ッエース、おれ、嬉し…!っん!うれしい…!!」
どくん、とさらに熱が灯ったのを、ルフィは身体の内側で感じたのだろう。びくりと盛大に跳ねて、驚きの混じった声を一声挙げた。だがそこからはもう、ヒートアップした揺さぶりにただただ翻弄されるだけだった。
ルフィの身体に埋めたそこから、ルフィに触れている皮膚全体から、快感でどろどろに溶けてしまいそうだった。信じられないほどの、快感と、愛情。
「…――泣かせてごめんな、ルフィ…」
「…っぅ、エース、エースッぅ」
「好きだ、ほんとに。手出せないくらい、好きだった」
「〜〜〜〜〜ッ、ばか、やろ、っあ」
「うん。だな。」
全身で感じるルフィは、熱くてやわらかくてその全てが愛おしくて、おれは、そのうなじに頬に小さな耳に、口づけて甘噛みしてそのどうしようもない感情を昇華させようと躍起になった。
おれの下でぐずぐずにとろけたルフィが、胸に当てたおれの手を上から強く強く握りしめ、イク、と声にならない声で訴えた。
性器の裏のあたり。ルフィのスポットめがけて腰を捻じ込み、剥けた先端を親指で撫でるように擦り、トドメに乳首を強く摘まんで追い込んだ。
身も世もない、と言った様子で身悶えたルフィが、掠れた悲鳴を挙げてシーツを一際強く手繰り寄せた。ぐしゅ、と右手を濡らした熱い液体。ぎゅう、と薄いゴム越しにおれを絞り上げる熱い内壁。
「…――っぐ…!」
どくどくと、近年稀にみる勢いと量の精液を噴き出して、おれはルフィの身体と一緒に崩れ落ちた。
しばらく整わない息をもてあまし、乱れに乱れたルフィの髪を指先で梳く。
ひどく億劫そうに、もどかしそうに身じろいだルフィの顔を、頬同士を擦り合わせるようにして後ろから覗き込む。
ルフィは心底嬉しそうに、紅色に染まった頬で、まるで溶けそうに甘い顔で、微笑った。
近すぎてぼやける視界をさらに押し潰すように、おれたちは甘く甘くキスをした。
******
クラシック調のメロディと波の音が、繁華街の巨大スクリーンから流れて落ちる。
「あー、ルフィだ!」
「? なにあれ、新しいCM?」
「だね!うわなんか、」
道行く女の子二人組が、そのまま言葉を失ってスクリーンに釘付けになる。
朝焼けの海。響く波の音に混ざる静かなメロディ。水の中から、ルフィがゆっくり立ち上がる。
シンプルなジーンズ。濡れて肌に貼りつく白いシャツ。漆黒の髪から、雫が落ちる。きれいな白い首筋を伝ったその水滴の行方を、カメラが追う。
濡れたような、ブラックダイヤの瞳。密な睫毛の下から、まっすぐに見る者を射抜く。
濡れてこめかみに貼りついた髪から、なめらかな頬、ちいさな顎を水滴が辿る。その雫が肌を離れる前に、華奢な腕が、それを甲で拭う。
その手首に光る、水に濡れた時計。
暗転したスクリーンに、時計の名前がシンプルに浮かぶ。
音楽が途切れる。
ルフィの声が、ブランド名と名前をささやくように読み上げる。
その響きの余韻を残して、画面は消えた。
「……〜〜〜〜ッ、何今の――!!」
「い、色っぽ、え!?ルフィどうしたの!?何があったの!!」
「ギャァァァルフィきれい信じらんない心臓痛い――!!」
あんまりにもいたたまれなくて、抱き合うようにして悲鳴をあげているその子たちから逃げるようにその場を去る。ゆるむ口元と熱を上げる顔を隠すために、手のひらを当てる。
腕の中に隠すように抱え込んだ恋人が、してやったりとばかりに忍び笑いを零した。
「…しし!『イロッポイ』だって。…何が、あったんだろうな?」
「〜〜〜〜〜、」
けらけら笑う一枚も二枚も上手のアイドル様に、おれは完全に負けて言葉を失った。
仕方ない。オオカミは撃ち殺されるのが相場と決まっている。
まあおれたちの場合は、エモノであるはずのその子みずから、銃をもって待ち構えている、ということだけど。
オオカミ男とガラスの銃
書いてるこっちの予想を超えて続編希望の声が多かった「ガラスニ」の続編でした。
ありがたや〜〜!ナムナム
しかしなんつーかねちっこい
2012.10.29. Joe H.
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