(学赤/虎鷹希拓数→高3、美鳥→高1設定)


いつもみんな、私よりも一歩二歩先をいく。それが嫌で、悲しくて寂しくて。置いて行かれたくない、だけれど泣いてしまえば、また子供扱いをされて嫌なのだ。





「美鳥ちゃん?」
「…こたくん」

うっすらと開けた目の先にいたのは、心配そうに眉を下げたこたくんの顔だった。
なんでこたくんが、と少し重い頭を上げればそこは図書室で、ああテスト勉強をしていて眠ってしまったのかと、今まで頭を伏せっていた場所を見て思った。

「美鳥ちゃん、大丈夫?」
「うん、ちょっと寝起きでぼーっとしちゃっただけだから」

大丈夫だよ、と答えると未だ眉を下げたままのこたくんがそっと、私の頬に触れた。

「美鳥ちゃん、泣いてる」
「え……」

そう言われて、自分でも初めて気付いた。頬を流れる涙に。なんでだろ、なんで私は泣いているんだろう。
意味もなく、ただ涙を流す私にこたちゃんは優しく頬を撫でて、何度も涙を拭ってくれた。

「怖い夢、みた?」

怖い夢……、ああそうだ、あれは、夢か。みんながいなくなる夢をみたんだ。私よりも2つ上で、年上のみんなが、いつも先をいくみんなが、いなくなってしまうすごく怖い夢だ。

「…みんなが、いなくなっちゃう夢……」
「……」
「みんな、私より先をいくの…私を置いて、いなくなっちゃうの……」
「いなくなったりしないよ」
「ひとり、は…やだ……ひとりぼっちは、やだよぉ……っ」

ふわりと暖かさに包まれた。それと同時に昔懐かしい匂い、こたくんの匂いがして、こたくんに抱きしめられてた。

「誰も、いなくなったりなんかしないよ。俺も、鷹ちゃんも希凛ちゃんも拓ちゃんも数ちゃんも、みんな、美鳥ちゃんから離れたりしないよ」
「こ、たく……」
「だから泣かないで…」

泣かないでって言われたのに、いなくならないって言われて安心した私はまたポロポロと泣いて、まるで昔に戻ったみたいに泣き止むまでこたくんが背中を優しく叩いてくれた。






「虎太郎ー、…って、」
「あら?」
「あれ?あれれ?虎太郎と美鳥ってば抱き締めあっちゃってこれはこれは」
「あ、みんな、部活お疲れ…」

規則正しいく、トン、トンと美鳥ちゃんの背中を叩いていたら部活を終えたいつものみんなが図書室へとやって来た。

「…?美鳥ちゃん寝てる?」
「うん…泣いたら、寝ちゃった」

俺の胸のところにある美鳥ちゃんの顔を覗き込むようにしながら聞く数くんに頷く。
泣き疲れちゃったかな、て思いながらふわふわした美鳥ちゃんの頭を撫でた。

「はあ?なんで泣いたんだ?」
「……怖い夢、みたんだって」

みんながいなくなる夢。大好きなみんながいなくなる、すごく怖い夢、って教えたらみんなちょっぴり眉を下げた。

「うーん……それでも、いくらこたくんだからって男の人に抱き付いたまま寝るのは、どうなのかしら…」
「というか、泣き疲れて寝るなんて美鳥ってばおこちゃまだねー」
「ちょっと拓馬、そんなほっぺつつくの止めなよ…」
「だってぷにぷにしてて気持ちいいんだもんよ」

悩む希凛ちゃんの横から拓くんが美鳥ちゃんのほっぺをつつく。つんつんと、ぷにぷにといかにも気持ちよさそうなほっぺに拓くんは頬を緩めてた。

「お?どれどれ……おぉ!本当だ!ちっちゃい頃から変わんねーな!」
「ちょっと鷹ちゃんも拓ちゃんも女の子のほっぺそんなにつつかないの!」
「き、希凛ちゃん、図書室で大きな声出したら怒られるよ…」

数くんの言葉に希凛ちゃんは口を紡ぎ、無言で鷹ちゃんと拓くんの頭を叩いた。ちょっと痛そ…と数くんと顔を見合わせると叩かれた頭をさすりながら鷹ちゃんが聞いてきた。

「つか美鳥どうすんだ?起こすか?」
「俺、おぶるよ」

気持ちよさそうに寝てるのを起こすのは可哀想、って思うのは昔から美鳥ちゃんが寝てるのを見ているからなのかな。

「やだ虎太郎くんカッコいい!俺もおんぶして!」
「今度ね」

美鳥をおぶるのを手伝ってもらって、荷物はそれぞれみんなが持ってくれた。

「美鳥ちゃん幸せそうだね」

帰り道、数くんの言葉にみんなが顔を覗き込んだ。俺には見えないけど、きっと、今はみんながいる夢を見てるんじゃないかなって思う。
今みんながそばにいるように。誰もいなくなったりなんかしないよ、みんな、一緒だよ。


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